相続空き家特例の適用期限とは?相続開始日から3年を経過する日の考え方
2024.05.15
一人暮らしの方が亡くなると、その方の生前の住まいが「空き家」になることがあります。
この家は通常、相続人が相続することになりますが、もしお子さんなどがこの家を相続しても、その家に住むことがなく空き家のままとなった場合、管理の負担ばかりが続いてしまいます。
こうした方に検討していただきたいのが相続空き家の特例です。
ただ、空き家特例には適用期限があるため、あまり時間をかけて検討していると使えなくなってしまうことがあります。
それでは、具体的に相続空き家の適用期限はいつまでなのでしょうか。
適用期限には2つの種類があります。
その2つとは「特例の施行期限」と「相続開始日からの期限」のことです。
空き家特例の適用期限
空き家特例の施行期限は「令和2027年末まで」
空き家特例には、現在「2027年12月31日まで」の期限が設けられています。
この期限を過ぎて売却しても、今のところは特例の対象になりません。
「今のところ」というのは、この空き家特例が期限の延長を繰り返してきたからです。
もともとは平成28年4月1日から施行された特例であり、その後何度か延長を繰り返して現在に至ります。
現在の期限は、令和5年度(2023年度)税制改正において延長されました。
国土交通省の資料によると、空き家の増加は今後も続き、2025年には420万戸、2030年には470万戸になるという推計があります。
政府としては、この470万戸を400万戸に抑えたいという目標があるようです。
こうした状況から、相続空き家特例はまだまだ延長の可能性もあるといえるのですが、現状では「2027年末まで」に売らなければ使えないことになっています。
相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
空き家特例には、もう一つ、相続開始日を起算日とした適用期限があり、こちらの期限はより重要です。
図解すると、次のようになります。
具体例で見ていきましょう。
【例】2023年(令和5年)5月1日に亡くなった場合
→相続開始日:2023年(令和5年)5月1日
→相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日:2026年(令和8年)12月31日
多くの人にとってはこのような期限になりますが、もしも相続開始日が1月1日や12月31日である場合、どうなるか迷われるのではないでしょうか。
参考までにご紹介します。
1月1日が相続開始日である場合
空き家の生前の持ち主(被相続人)が1月1日に亡くなられた場合は、かなり期限が短くなりますので注意が必要です。
【例】2023年(令和5年)1月1日に亡くなった場合
→相続開始日:2023年(令和5年)1月1日
→相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日:2025年(令和7年)12月31日
空き家特例の期限は、厳密には相続開始日を起算日に含めるルールになっています。
「相続の開始があった日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間」と定められているからです。(租税特別措置法第35条第3項)
そして「3年を経過する日」については「末日」になりますので、1月1日の〇年後は、12月31日になります。
「1月1日の〇年後は1月1日では?」と思われるかもしれませんが、それは「〇〇の翌日から起算して」や「経過する日」ではなく「経過した日」などと定められている条文の話になります。相続空き家特例はこれに該当しません。
12月31日が相続開始日である場合
空き家の生前の所有者(被相続人)が12月31日に亡くなられた場合についても同じように考えてみましょう。
【例】2022年(令和4年)12月31日に亡くなった場合
→相続開始日:2022年(令和4年)12月31日
→相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日:2025年(令和7年)12月31日
上記のとおり、空き家特例の期限は、年末~翌年1月1日に亡くなられる場合、短くなるということです。
つまり、相続の日によって売却期限までの日数が変わるということになりますので、ご注意ください。
期限にゆとりをもって相談を
相続空き家の期限は、いずれも「売却」が判定基準となります。
そして、不動産は売却しようと思ってすぐにできるものではありません。立地等によっては、買い手が見つかるまで数年待つこともあるでしょう。
また、売却を急いだため、良い値段がつかず、後になって「税金を払ってもいいから、いい買い手が見つかるまで待てばよかった」と後悔するようなことは避けなければなりません。
空き家対策や相続のこと全般について税金などが気になる方は、ぜひご相談ください。
空き家特例の期限以外の条件については、こちらの記事でも解説しています。