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融資における保証料の勘定科目と仕訳方法を税理士が解説します

2024.09.4

保証料の勘定科目の正しい理解は、適切な税務会計の処理を行うために重要であり、企業の決算書や納税額にも影響します。

本記事では、保証料の勘定科目に焦点を当てて、融資の保証料について具体的な会計処理を解説します。

保証料の勘定科目とは?基本的な考え方を解説

「保証料」とは、将来のリスクに備えるために、保証サービスを提供する企業や団体に支払う料金です。

経営者が、金融機関から融資を受ける場合にも、この「保証料」の支払いが必要になることがあります。

そもそも、融資の保証料は何のための費用?

金融機関に融資を申し込む際、金融機関から「保証付き融資」を提案されることがあります。

保証付き融資とは、事業主が「信用保証協会」に「保証料」を支払うことで実行される融資のことです。

信用保証協会とは、借金の保証人の役割を果たす組織です。

万が一、事業主から金融機関への返済が滞った場合、「代位弁済」により事業主に代わって金融機関に残りの債務の支払いを行います。

信用保証協会が代わりに支払った金額は、その後、信用保証協会が事業主に請求し、いずれ回収されるしくみです。そのため、事業主の返済義務がなくなるものではありません。

それでも、中小企業が融資を申し込むとき、とりわけ初めての融資の場合は、それまでの返済実績がないこともあって、金融機関は簡単にお金を出すことができない状況です。

そこに信用保証協会からの保証が加われば、金融機関としては、貸し倒れのリスクが無くなるため、開業して間もない企業にも、融資を実行しやすくなるのです。

融資の保証料の金額

金融機関から融資を受ける際の信用保証料の金額は、借入金の額やその保証期間、保証料率、返済方法によって決定します。

保証料率は、年1~2%ほどです。

たとえば、融資の金額が1,000万円、信用保証料率が年2%、保証期間60ヶ月、返済方法が満期一括である場合、信用保証料の金額は、100万円(1,000万円×2%×60ヶ月/12ヶ月)になります。

また、借入金の返済が、満期一括返済ではなく分割払いであれば、信用保証料は下がります。
分割払いの方が、保証しなければならない金額が徐々に減るため、満期まで返済しない場合よりも信用保証協会の負担が小さくなるからです。
その場合、上記の信用保証料に、分割係数(割引のための係数。おおむね0.5~0.7程度)をかけて計算されます。

融資の保証料を支払う時期

信用保証料は、融資の実行時にその全額を支払うこととされています。

信用保証協会が認めた条件下では、分割払いができる場合もありますが、原則は一括払いとなります。

保証料の支払い先は、融資を実行する金融機関であり、通常、その金融機関から信用保証協会に送金されます。

融資における保証料の勘定科目と正しい会計処理方法

融資の保証料を支払った時の勘定科目は、「支払手数料」などを使います。

ただし、その支払い時に全額を「支払手数料」にすることはできません。

なぜなら信用保証料は、その保証期間にわたって効果を受け続けられる費用であり、適正な期間損益を計算するためには、その事業年度に対応する金額しか費用にできないからです。

当期の費用に計上できない金額は「前払費用」として、資産計上しなければなりません。

また前払費用のうち、決算後1年を超えて費用になるものは「長期前払費用」とします。

以下、支払手数料、前払費用、長期前払費用の範囲をそれぞれ示します。

支払手数料の範囲

信用保証協会に支払う保証料のうち、保証期間が当期内にあたる分の勘定科目は、「支払手数料」とします。

例えば、3月決算法人が、9月に信用保証料100万円を振り込み、保証期間は、60ヶ月である場合、この場合、当期の費用になるのは60ヶ月分のうち6ヶ月分(9月分~翌年3月分)ですので、支払手数料にできる分は、10万円(100万円×6ヶ月/60ヶ月分)になります。

前払費用の範囲

当期の費用にならない保証料のうち、保証期間が決算後1年以内にあたる分の勘定科目は、「前払費用」とします。

先ほどの例では、決算後1年以内に費用になる額は、20万円(100万円×12ヶ月/60ヶ月分)で、残りは長期前払費用に計上します。

長期前払費用の範囲

当期の費用にならない保証料のうち、保証期間が決算後1年を超える分の勘定科目は、「長期前払費用」とします。

先程の例では、100万円のうち、70万円(100万円×42ヶ月/60ヶ月分)となります。

融資の保証料の仕訳例

それでは、3月決算法人が9月に信用保証料100万円(保証期間は60ヶ月)を振り込んだ場合の仕訳処理を確認しましょう。

パターンを2つご紹介します。

試算表を毎月チェックしている経営者の方は、パターン1のほうが当期の費用を正確に把握しやすいため、おすすめです。

【支払い時】

・パターン1

支払い時に、前払費用と長期前払費用を計算して計上する方法です。

借方金額貸方金額
支払手数料10万円普通預金100万円
前払費用20万円
長期前払費用70万円

・パターン2

パターン2は、支払手数料100万円全額を一度に計上し、決算時に前払費用や長期前払費用に振り替える方法です。

借方金額貸方金額
支払手数料100万円普通預金100万円

【決算時】

・パターン1

仕訳は必要ありません。

・パターン2

支払手数料のうち、当期の費用に該当しない金額を前払費用や長期前払費用として資産計上します。

借方金額貸方金額
前払費用20万円支払手数料90万円
長期前払費用70万円

【翌期:期首】

・前払費用や長期前払費用を計上すると、翌期以降の取り崩しが必要になります。まずは翌期首の開始仕訳として、下記の振り替え仕訳を行います。(パターン1と2で共通)

借方金額貸方金額
支払手数料20万円前払費用90万円

【翌期:決算時】

・長期前払費用のうち、翌期の費用に計上される分を前払費用に振り替えます。(パターン1と2で共通)

借方金額貸方金額
前払費用20万円長期前払費用20万円

以降は、前払費用の残高が0円になるまで、これを繰り返します。

融資の保証料の勘定科目を設定する時の注意点

経営者の多くは、会計ソフトを使用して仕訳処理をしていると思います。

融資の保証料を「支払手数料」として処理するときは2つ注意したい点があります。

保証料の消費税について

融資の保証料は、消費税の「非課税仕入れ」となります。

「支払手数料」の勘定科目は、他のさまざまな手数料に使用すると思いますが、一般課税事業者である場合は、課税区分が課税仕入れになっているものとは分けて設定しなければなりません。

融資の手数料を計上するために新たな勘定科目を設定する場合は、この点に注意してください。

融資の保証料は営業外費用になる

ここからは、決算書の一つである「損益計算書」の表示区分の話になります。

融資の保証料は、営業活動から生じたものではないため、損益計算書の上では「営業外費用」に含めて表示されるものとなります。

しかし、「支払手数料」として処理する支払いの中には、「販売費及び一般管理費」に該当するものもあるはずです。

「販売費及び一般管理費」に不要な金額を含めると、損益計算書において「本業で稼ぐ力」を示す「営業利益」が減少し、必要以上に稼ぐ力が少なく見えてしまいます。

この場合、融資の保証料の勘定科目を「営業外費用」に含まれるよう区別することで、外部に正しく、その事業の「稼ぐ力」を示すことができます。

融資保証料が営業外費用になることの図解

会計ソフトの勘定科目には、決算書のどこに反映されるかを設定することができますので、融資の手数料を「支払手数料」にする場合や、それ以外の新たな勘定科目を設定する場合は、損益計算書の反映先にも気を配りましょう。

決算書を外部に公開する義務のない企業の場合はどこまで厳密に処理するかという問題がありますが、これについては、会計ソフトで簡単に設定できることですので、それほど負担にならないのではないでしょうか。

融資の保証料は「支払利息」に含めてもよい

融資の手数料は、「支払手数料」以外の勘定科目を使用しても問題ありません。

たとえば、融資の利息の仕訳に用いる「支払利息」に含めることも可能です。

この「支払利息」も「非課税仕入れ」であり「営業外費用」ですので、含めてしまったほうが「支払利息」の勘定科目に計上すると、楽な場合もあるかも知れません。

いずれの勘定科目を使用する場合でも、継続適用をするようにしましょう。

なお、「支払利息」に含めた場合でも、翌期以降の保証期間に対応する分は、前払費用・長期前払費用で管理します。

経理処理でわからないことは、顧問税理士や、税理士にスポットで記帳代行を依頼するなどの解決方法がありますので、参考にしてください。

保証料の勘定科目についてよくある質問

Q1: 融資の保証料を支払った際、どの勘定科目を使用すべきですか?

通常、保証料を計上する際は「支払手数料」の勘定科目を使用します。ただし、保証期間が複数の会計年度にまたがる場合、当期に対応する部分のみを「支払手数料」とし、残りの部分は「前払費用」や「長期前払費用」として資産計上する必要があります。これにより、適正な期間損益を計算し、正しい税務申告や正しい財務書類を作成することが可能になります。

Q2: 支払手数料として計上する際、注意点はありますか

支払手数料として保証料を計上する際には、以下の2つの点に注意が必要です。

・消費税の課税区分:保証料は消費税の「非課税仕入れ」に該当します。そのため、課税対象の手数料とは別に設定し、適切に処理する必要があります。

・表示区分:保証料は営業活動から生じた費用ではないため、損益計算書上では「営業外費用」に区分して表示するべきものです。これにより、本業の利益(営業利益)を正確に示し、外部の利害関係者に対して適切な財務情報を提供できます。

まとめ

保証料の勘定科目や会計処理について解説しました。

正しい処理を行うことは、正しい納税や財務・業績管理のために重要です。

当事務所では、こうした経理のための処理から、税務に関する幅広いサポートまで対応しています。お困りの際は当事務所にご相談ください。



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