特定新規設立法人とは?制定された理由や要件を解説
2024.08.14
特定新規設立法人とは
特定新規設立法人とは、新しく設立された法人のうち、設立1期目から消費税の納税義務が免除されない法人のことです。
平成26年(2014年)4月1日以後に設立された法人に適用されます。
なぜ特定新規設立法人が制定されたのか
新しく設立された法人の納税義務は原則免除
新しく設立した法人の場合、原則的には、消費税の納税義務が免除されるようになっています。
なぜなら消費税の納税義務は、「基準期間」(基本的には2期前)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定されるからです。
新しく設立された法人には「2期前」が存在しませんので、それに該当する課税売上高も存在しません。
このことから、新しく設立した法人は、原則的には消費税の納税義務が免除されるのです。
その一方で、最初から資本金や出資金が1,000万円以上で設立されるような法人は、この免除の対象にならず「新設法人」として設立1期目から消費税の納税義務があります。
このような規模で設立される法人は、その売上規模も設立当初から当然大きくなると考えられるからです。
特定新規設立法人が制定された背景
そうすると、「それなら資本金1,000万円未満で会社を作れば、2年間は消費税を納税しなくていいのでは」と考える会社が出てきます。
財務省の資料によれば、当時、比較的規模の大きな人材派遣会社などによる資本金1,000万円未満の子会社を利用した脱税事案など、租税回避と見られる事例が散見されたそうです。
こうした行為を防ぐために、「特定新規設立法人」の規制が税制改正により新たに設けられました。
これにより、平成26年4月1日以後に設立された法人のうち「特定新規設立法人」に該当する法人についても、設立1期目から消費税の納税義務が生じることになったのです。
(参考資料)財務省:平成25年度税制改正の解説:社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律関係より
特定新規設立法人の要件
特定新規設立法人とは、新しく設立された法人のうち、資本金が1,000万円未満でも納税義務が免除されない法人のことです。
売上規模の大きな法人やその関係者が、実質的に経営を支配している法人を免税にしないためのルールとなります。
具体的には、次の1と2のいずれの要件にも該当する法人をいいます。
要件1:「特定要件」に該当すること
基準期間のない事業年度開始の日において、他の者によりその新規設立法人が支配される一定の場合(特定要件)に該当すること
要件2:「他の者」等の課税売上高が一定の基準を超えること
上記1の特定要件に該当するかどうかの判定の基礎となった「他の者」及び「他の者」と一定の特殊な関係にある法人(特殊関係法人)のうち、いずれかの者の「基準期間に相当する期間」の課税売上高が5億円を超えること
特定新規設立法人に該当する場合の手続き
特定新規設立法人に該当することとなった場合は、「消費税の特定新規設立法人に該当する旨の届出書」を税務署に提出します。
特定新規設立法人の判定時の注意点
インボイス登録をする法人
設立1期目からインボイス(適格請求書)を発行したい場合は、設立1期目から適格請求書発行事業者に登録する必要があります。
この登録の際に、免税事業者である法人は、課税事業者になることを併せて選択しなければなりませんので、特定新規設立法人の要件に該当してもしていなくても、納税の義務があります。
”抜け道探し”の際は合併や分割にも注意
特定新規設立法人の要件は、わかりやすく言えば課税売上高5億円の規模の者に50%以上の経営権を支配されているというものですが、この要件に該当しなくても、納税義務が免除されないケースがあります。
例えば、合併や分割により新設合併法人や新設分割子法人を設立した場合、被合併法人や新設分割親法人の基準期間に対応する期間の課税売上高が1,000万円を超える場合は、納税義務は免除されません。
いろいろと抜け道がありそうな特定新規設立法人ですが、他にも納税義務が免除されない要件があることに注意が必要です。
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