第9回 日本政策金融公庫の特別融資(新型コロナウイルス感染症特別貸付)
2020.04.10
新型コロナウイルスの感染者が増加するにつれ、わが国での経済活動に及ぼす影響は一部の業種だけでなく広範囲の業種に及ぶようになってきています。
政府が行う「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」に従い、政府系金融機関である日本政策金融公庫では新たに「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を創設し、資金繰りが困難な事業者を支援しています。
この記事ではその「新型コロナウイルス感染症特別貸付」について、わかりやすく解説します。
新型コロナウイルス感染症特別貸付とは
新型コロナウイルス感染症で影響を受けている事業者の資金繰りを支援するため、日本政策金融公庫が行う特別な融資制度です。
利用可能者
新型コロナウイルス感染症の影響を受け一時的に業況が悪化しており、以下の2つの条件いずれかに該当する事業者(中長期的には業況が回復し発展が見込める事業者に限ります)
1.最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少していること
2.業歴3ヶ月以上1年1カ月未満の場合、最近1ヵ月の売上高が次のいずれかと比較して5%以上減少していること
(1)過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高
(2)令和元年12月の売上高
(3)令和元年10月から12月の平均売上高
なお、業歴3か月未満の場合は利用できません。別途新規開業資金等の創業融資を利用することになります。
過去に受けた融資について、条件変更(リスケ)を行っていることだけを理由に利用できないと判断されることはありません。
経済産業省からもそのようにニュースリリースがされています。
利用できる資金使途
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会的要因等(行動自粛に伴う売り上げ減少など)により必要な設備資金(機械等設備の購入資金)および運転資金(買掛決済資金や人件費・家賃等の諸経費支払資金)に利用できます。
かなり広範囲な定義ですが、新型コロナウイルス感染症に無関係な資金には利用できません。
融資限度額
他の融資制度とは別枠で6000万円となっていますが、他の災害貸付等の例と同様に事業者の財務内容により公庫が判断することになります。
適用利率
他の災害貸付と共通で設定された基準利率(令和2年3月2日現在年1.36%~1.55%:期間によりこの範囲内で上下)が原則です。
ただし3000万円を限度として融資後3年間はその基準利率より-0.9%、4年目以降は基準利率となります。
融資後3年間において条件に該当すれば国より利子補給が行われ、実質無利子となります(詳細は後に解説します)。
返済期間
設備資金:返済期間20年以内、据置期間(利息のみの支払期間)5年以内
運転資金:返済期間15年以内、据置期間5年以内
通常の融資制度での設備資金の返済期間10年以内(据置期間2年以内)、運転資金の返済期間7年以内(据置期間1年以内)と比べると、返済期間と据置期間とも長期となっていることがわかります。
担保の要否
無担保での利用が可能です(無担保無保証人ではありません)。
利子補給制度による実質無利子化
利子補給制度の概要
新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資額が3000万円以内の部分について、適用される利率「基準利率-0.9%」の利息を支払った後に、公庫以外の政府が指定した機関が利子補給を行う予定となっています。
一旦支払った利息を後になって利子補給してもらえるため、実質は無利子で利用したことと同じになります。
期間は3年間となっていますが、詳細な実施方法は検討中です。
また令和2年3月28日に安倍首相が、公庫以外の民間金融機関に対してもこの利子補給制度を適用していく方針を表明しました。今後の状況を注視していく必要があります。
利子補給制度適用の条件
新型コロナウイルス感染症特別貸付を受けた事業者であって、以下の要件に該当すること。
(※1)小規模事業者とは、卸・小売業、サービス業は「常時使用する従業員(*)が5名以下の企業」、それ以外の業種は「同20名以下の企業」をいう。中小企業者とは、この他の中小企業をいう。(*)労働基準法上における「予め解雇予告を必要とする者」
(※2)売上高要件の比較は、左記貸付で確認する最近1ヵ月に加え、その後2ヵ月も含めた3ヵ月間のうちのいずれかの1ヵ月で比較。
(引用:日本政策金融公庫ホームページ「実質無利子化」について)
まとめ
・新型コロナウイルス感染症特別貸付のうち3000万円以内の部分は、特に低い利率令和2年3月2日現在年0.46%~0.65%)が適用されている融資制度
・さらに条件に当てはまれば3年間は利息を支払った後に利子補給が受けられ、実質無利子で利用することが可能。
・利子補給は当初公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付のみが対象であったが、令和2年3月28日に安倍首相により公庫以外の民間金融機関に対しても対象とする方針を表明
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