令和6年の住宅ローン控除と定額減税 控除額の関係や影響を解説
2024.06.19
定額減税によって所得税が減税されると、令和6年に適用される住宅ローン控除の減税効果を十分に享受できないのではないかとの声が上がっています。
しかし、定額減税によって住宅ローン控除の減税効果が減少することはありません。
この記事では、令和6年の住宅ローン控除と定額減税の関係がどのように調整されるのかを解説します。
定額減税とは
定額減税とは、所得税や住民税の納税義務者である個人に対し、その所得税や住民税を減税する形で実施される経済政策です。
定額減税の減税額
定額減税によって減税される金額は、所得税から3万円、住民税から1万円の計4万円になります。
さらに、同一生計である配偶者や親族を扶養している場合、その人数に応じて1人あたり4万円(所得税3万円、住民税1万円)の減税額が加算されます。
例えば、夫、妻、子3人の5人家族で、夫のみに収入がある場合、所得税については15万円、住民税については5万円が、夫の所得税と住民税から減額されます。
定額減税の対象になる納税者本人や、加算対象になる家族の要件については、こちらの記事で解説しています。
定額減税による住宅ローン控除の影響について
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは、年末の住宅ローン残高に控除率を乗じた金額を、その年の所得税から控除できる税制です。
例えば、年末の住宅ローン残高が4,000万円、適用される控除率が1.0%であれば、「4,000万円×1.0%」(※)で「40万円」がその年の所得税から控除されます。
(※)入居年や取得した住宅によって、計算に使用できるローン残高の上限額や控除率に違いがあります。
【控除しきれない税額がある場合】
住宅ローン控除で所得税から控除しきれない金額がある場合、下記の限度額まで住民税から控除されます。
・平成26年4月~令和3年12月までに入居
→13万6,500円
・令和4年1月~令和7年12月まで
→9万7,500円
なお、「平成26年4月~令和3年12月まで」は消費税の税率が8%または10%、「令和4年1月~令和7年12月まで」は10%であることが条件になります。
定額減税は住宅ローン控除「後」の税額に適用
定額減税によって所得税が減税されると、住宅ローン控除の減税効果を十分に受けられないのではないかということが気になります。
例えば、先ほどの5人家族の例で、夫の給与年収が900万円であるとしましょう。
この場合、夫の納税額の目安は、所得税が約53万円、住民税が約48万円です。
この夫の所得税に対して、住宅ローン控除を40万円、定額減税15万円を適用するとします。
次の図をご覧ください。
図のとおり、定額減税は住宅ローンの控除が適用された「後」の残りの税額に対して実施されます。
つまり、住宅ローン控除は定額減税に優先して適用されますので、定額減税が原因で住宅ローン控除の減税効果が下がることはありません。
住宅ローン控除後に「定額減税」の控除不足が発生した場合
上図のとおり、この例では、夫の住宅ローン控除後の所得税は約13万円になります。
しかし、夫の所得税の定額減税は15万円(3万円×5人分)ですから、住宅ローン控除後の所得税の金額が、定額減税の額を下回っています。
この場合、定額減税はどうなるのかというと、納税者が損をすることはありません。
定額減税によって控除しきれない所得税や住民税が生じた場合、控除不足額を1万円単位で自治体から納税者に給付する「調整給付」のしくみがあるからです。
もし、夫に25,000円の定額減税の不足額が発生した場合、調整給付から30,000円(1万円未満切り上げ)が支給されます。
まとめ
定額減税によって住宅ローン控除の上限額が下がったり、住宅ローン控除によって定額減税が受けられなくなることはありません。
「調整給付」の金額の計算方法などについては、こちらの記事でまとめました。
令和4年~令和7年入居者の住宅ローン控除についてはこちらの記事で解説しています。
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