特定新規設立法人の判定:「他の者と特殊関係法人の5億円超判定要件」をわかりやすく解説
2024.08.28
特定新規設立法人とは
「特定新規設立法人」とは、新たに設立された法人のうち、設立1期目から消費税の納税義務が免除されない法人を指します。
新しく設立された法人については、納税義務の判定対象となる基準期間(基本的には前々期)や特定期間(基本的には前期の前半6か月)が存在しないため、基本的に納税義務はありません。
ただし、基準期間がない法人であっても、1,000万円以上の資本金がある場合や、1,000万円未満でも「特定新規設立法人」に該当する場合は、設立1期目から消費税の納税義務が発生します。
「特定新規設立法人」とは、基準期間のない法人のうち、その事業年度の開始日に「特定要件」と「5億円超え判定要件」の両方に該当する法人のことです。
特定新規設立法人の判定のおおまかな流れとしては、まず「特定要件」に基づき、その新設会社に対して経営支配力(50%を超える経営権)を持つ者の有無を判定します。
そして、こうした者が有れば、次にその者やその者が完全支配する法人の中に、収益力が5億円規模を超える法人がないかどうかを確認します。
この記事では、特定新規設立法人の「5億円超え判定」の要件について解説します。
特定新規設立法人の「5億円超え判定」とは
「5億円超え判定」とは、「特定要件」に該当するかどうかの判定の基礎となった「他の者」と、「他の者と完全支配関係にある法人(=特殊関係法人)」のうち、いずれかの者の基準期間の課税売上高が「5億円」を超える場合に該当します。
特殊関係法人の範囲
「特殊関係法人」とは、「特定要件」に該当する判定の基礎となった「他の者」(その法人の株式や出資、議決権を直接有している者)が完全支配する「他の法人」のことです。
わかりやすい例で、特殊関係法人の範囲を確認しましょう。
【例1】
・A社はBさんから50%を超える出資を受けて新しく設立された
・Bさんは、Bさんが100%出資をしているC社を所有している
「特殊関係法人」の判定は「特定要件」の判定結果が基礎になるため、まずは特定要件を満たしているかどうかを見ていきます。
このケースでは、A社は、Bさんを「他の者」とする特定要件を満たしています。
したがって「特殊関係法人」の判定は、A社に直接出資を行っている「他の者」すなわち「Bさん」を起点に行います。
続いて、「特殊関係法人」とは「他の者」が完全支配している他の法人のことです。
したがって、Bさんが100%出資をして完全支配しているC社は、A社の特殊関係法人になります。
判定のポイントは、BさんがA社に出資をしていること(直接株主であること)と、BさんとC社の間に完全支配関係があることです。
もしBさんがB社という法人である場合であっても、考え方は同じです。その場合はB社が「他の者」、C社が「特殊関係法人」になります。
【例2】
・A社はBさんから50%を超える出資を受けて設立された
・Bさんは、Bさんが100%出資をしているC社を所有している
・Bさんには妻がおり、妻はD社を所有している
前の【例1】との違いは、「他の者」の配偶者にも完全支配関係のある法人が存在することです。
A社に直接出資をしている「他の者」が個人である場合、その親族等(親族、事実婚の相手、生計を維持されている者など)の関係者も「他の者」に含まれます。
そのため、夫であるBさんの「C社」とともに、Bさんの妻の「D社」も特殊関係法人になります。
特殊関係法人の例外
前の【例2】を見て「それだと、会社を設立する時は、親族全員に会社を所有していないか確認する必要があるのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、そのような確認は不要です。
なぜなら、親族等のうち「他の者」と同一生計でない者は、特殊関係法人の判定対象から例外的に除かれるというルールがあるからです。
このことから、関係のない親戚に確認をとるような作業は必要ありません。
ただし、同一生計でない親族であっても、その者がA社に直接出資をしてBさんとともに「他の者」に該当する場合があり、その場合は、特殊関係法人の判定対象になります。
基準期間の5億円超えの判定
特殊関係法人を特定した後は、「他の者」と「特殊関係法人」の中に、基準期間の課税売上高が5億円を超える者がないかどうかを判定します。
ここでいう基準期間とは、新規に設立した法人の新設開始日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に終了した、「他の者」や「特殊関係法人」の事業年度のことです。
なお、「他の者」や「特殊関係法人」のすべてが、常に課税売上高5億円以下の規模であれば、いずれも特定新規設立法人には該当しませんので、基準期間を特定する必要はありません。
まとめ
特定新規設立法人の「5億円超え判定」の要件について解説しました。
会社設立時の手続きや、その際の消費税の納税義務に関する判断などにお悩みの方は、ぜひ当事務所までご相談ください。
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