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投資促進税制の特別償却のメリットとは

2021.04.7

令和3年度税制改正によって、「投資促進税制」や「経営強化税制」が2年間延長されました。今回は、これらの税制で選択できる「特別償却」のメリット・デメリットについて解説します。

特別償却ができる主な税制

特別償却が使える有名な税制には、中小企業の「投資促進税制」と「経営強化税制」があります。いずれも、一定の設備投資を行った中小企業の税負担を軽減するための制度です。以前は「生産性向上設備投資促進税制」や「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」がありましたが、前者は平成29年度税制改正によって「経営強化税制」に、後者は今回の令和3年度税制改正によって「投資促進税制」と「経営強化税制」に引き継がれました。

投資促進税制と経営強化税制は、どちらも特別償却を選択できます。また、特別償却ではなく税額控除を選ぶこともできますが、税額控除は、法人税の20%が上限になります。

※資本金の額が3,000万円以下の法人や個人事業主のみ

特別償却のメリット

投資初年度の資金繰りを安定させやすい

特別償却は、減価償却のスピードを早めるためのものです。
100万円で取得した固定資産について、初年度で100万円すべてを経費にできることもあります。(備忘価額1円は残さなければなりません)
資金繰りを安定させるには、合理的な方法です。
なぜなら、設備投資をすると一度に多くの資金を失います。
そのため、もっとも節税したいのは、設備投資をした事業年度になるからです。
このことから、設備投資をした事業年度に経費を多く計上できる特別償却は、お金が必要なときに会社に多くの資金を残せるメリットがあります。
業績によっては、法人税額が0円になることもあります。
これに対し、税額控除には法人税の20%という上限があるため、法人税を0円にすることはできません。

一年間の繰越しもできる。

特別償却ができる金額よりも会社の利益が少ない場合、特別償却のメリットはないように思えますが、そのようなときは、特別償却不足額を一年間だけ繰り越す方法があります。
詳しくはこちらをご覧ください。
なお、税額控除も一年の繰り越しが可能です。

特別償却のデメリット

経費にできるトータルは同じ

特別償却は、あくまで通常の減価償却の前倒しであるため、適用した事業年度の節税額は多くなったとしても、トータルで経費にできる額は同じです。
たとえば、100万円で取得した固定資産を、初年度ですべてを経費にすれば、翌期からその固定資産について計上できる減価償却費は0円になります。
法人税がかかるタイミングを将来に繰り延べる制度という理解をしなければなりません。
複数年でみれば、税額控除のほうが節税効果は高いです。
法人税を負担する十分な資金があれば、税額控除を選択しましょう。

減価償却費として計上すると減益する

減価償却費を多く計上するということは、その年の利益が少なくなります。
融資の審査など、利益を多く見せたいときには後悔するかも知れません。
なお、特別償却を適用しながらこのデメリットを受けない方法として、剰余金の処分をして「特別償却準備金」を計上する方法もあります。

(参考)特別償却準備金とは

特別償却には、特別償却費を「特別償却準備金」を計上する方法もあります。
この方法では、特別償却準備金を計上するとき、その額を一度に損金とし、翌事業年度から7年あるいは5年(5年以下の耐用年数の資産はその年数)で準備金を均等に取り崩します。
会計処理の方法は、減価償却費など勘定科目で損金経理する方法と、剰余金を処分する方法があります。

【損金経理する方法】

【剰余金を処分する方法】

後者の剰余金を処分する方法は、会計上の損益に影響を与えません。
そのため、法人税の申告時に、申告書の別表四で減算調整を行って損金にするという手間が生じますが、一方で、会計上の利益を減らさずに、設備投資をした初年度に経費を多く計上できるメリットを得られます。
少しわかりづらい話だと思うのですが、特別償却準備金を取り崩すとき、取り崩した額は、法人の益金になります。
つまり、複数年でみたとき、特別償却準備金による損益は0になります。
通常の減価償却費は、通常どおり行います。
このように特別償却準備金については処理が複雑ですので、適用するときは、税理士にご相談ください。

投資促進税制の特別償却のメリットとは記事まとめ

・特別償却のメリット:投資初年度の資金繰りを安定させやすい

・特別償却のデメリット:課税の繰り延べなので、複数年で見れば税額控除のほうが節税効果は高い

・特別償却準備金を計上する方法もある。(税理士にご相談ください)

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