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特別償却に不足額が生じたときの処理について

2021.04.12

投資促進税制等を適用するとき、特別償却を選びたいけれど今年度の利益では全額を計上することができないという場合があります。
そうしたとき、特別償却の繰り越しを検討しましょう。
ただし、繰り越せる金額は、通常の減価償却の限度額を考慮して判定する必要があります。
また、繰り越した後、通常の減価償却費の計算にも注意点があります。

特別償却の繰り越しとは

特別償却とは

通常、固定資産を購入したときは減価償却によって、少しずつ経費にしなければなりません。
しかし、投資促進税制など特別な税制で認められている「特別償却」を適用する場合、通常の減価償却費に一定額を上乗せすることができます。
通常の減価償却よりも多く減価償却費を計上できるため、初期に多くの節税ができ、資金繰りを安定させることができます。

償却不足額は一年間繰り越せる

特別償却を適用したいけれど、その事業年度の業績から、全額を損金にできない場合があります。
この場合、特別償却による償却不足額を一年間、繰り越すことができます。
正確にいうと、「事業年度開始の日前一年以内に開始した各事業年度」において発生した特別償却の不足額を繰り越せるルールですので、一事業年度が一年間なら、翌事業年度まで繰り越せることになります。(租税特別措置法第52条の2第2項)

特別償却不足額を繰り越す方法

特別償却不足額の計算方法

「特別償却不足額」として翌年に繰り越せる金額は、「特別償却限度額」に対して不足している額になります。
「特別償却限度額」とは、たとえば取得価額が100万円、特別償却率30%であれば、30万円になります。

特別償却不足額の計算例

【例】

・取得価額100万円

・耐用年数5年

・定率法(200%定率法)

・償却率0.400

・保証率0.10800(保証額10万8,000円)

・特別償却を適用(特別償却率は30%)

初年度の期首から事業に使用したとすると、初年度の普通償却限度額(=通常の減価償却で損金に算入できる限度額)は40万円(100万円×0.400)です。
これを特別償却限度額30万円と合わせると、合計で70万円を償却することができます。
特別償却不足額は、この70万円から、実際に減価償却をした額を差し引いて計算します。
では、翌年に繰り越せる特別償却不足額がいくらになるか、具体例で見てみましょう。

【例1】70万円を減価償却した場合
→特別償却不足額は0円です。

【例2】30万円を減価償却した場合
70万円-30万円=40万円
→特別償却不足額は30万円です。

【例3】50万円を減価償却した場合
70万円-50万円=20万円
→特別償却不足額は20万円です。

(解説)
まず、【例1】は普通償却限度額と特別償却限度額の合計である70万円を減価償却しているので、繰り越せる額はありません。

続いて【例2】ですが、繰り越せる不足額は、特別償却限度額である30万円が上限になります。普通償却限度額にも不足額が生じていますが、これは切り捨てとなり、繰り越すことはできません。

最後の【例3】は、普通償却限度額を超える減価償却が行われている例です。
この場合、普通償却限度額を超える額が特別償却に充てられるため、特別償却不足額は、70万円から減価償却費を差し引いた20万円になります。

繰り越した事業年度の減価償却費の計算方法

特別償却不足額を翌年に繰り越したときの減価償却費の計算方法は、その事業年度の「普通償却限度額」に「特別償却不足額」を足した額になります。
先ほどの【例2】から、翌事業年度の減価償却費を考えてみましょう。
【例2】で30万円の減価償却をしているので、翌事業年度の期首の帳簿価額は70万円です。
定率法を採用しているときの「普通償却限度額」は、この帳簿価額から「特別償却不足額」を控除した額から計算します。
よって、普通償却限度額は下記の計算式になります。

(70万円-30万円)×償却率0.400=16万円

これに特別償却不足額30万円を加えた46万円が、翌年の償却限度額になります。
会計ソフトの固定資産台帳で自動計算される減価償却費から仕訳をしている方は、特別償却不足額を控除し忘れることがあるので、注意してください。
定額法で償却している資産のときは、30万円を控除する必要はありません。

特別償却不足額を繰り越す方法

特別償却の不足額が生じた事業年度から不足額を繰り越す事業年度まで連続して青色申告をしていることが必要です。
また、特別償却をするときは、その税制専用の付表を添付する必要があります。

(参考)国税庁HP「特別償却制度(適用法令)別の添付すべき付表」

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/060831/03.htm

特別償却に不足額が生じたときの処理について記事まとめ

・特別償却に不足額があるときは、一年間繰り越すことができる

・特別償却不足額として繰り越せる額は、「特別償却限度額」に対して不足している額

・定率法を使っている資産の特別償却不足額を繰り越すときは、翌期首の普通償却限度額の計算に注意

なお、税額控除も一年間の繰り越しが可能です。

今から特別償却か税額控除を選択するという方は、これらを踏まえてどちらが有利か検討する必要があります。

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