源泉所得税の事務手続き【経営者必読!税金関係で基本の基本】
2019.06.26
7月10日が納期限の夏期源泉の納期限が近づいてまいりました。弊所でも、6月の給与支給額が確定したお客様に、順次作成した源泉所得税の納付書をお渡しさせていただいております。納付書作成にあたっての打ち合わせの際、時期的に源泉納付のタイミングであることもあり、お客様から改めて源泉の仕組みについて質問をいただくことがあります。会社経営者や個人事業者等の経営者は、源泉所得税について、毎月作業が発生する関係上、少なくとも基本を理解しておく必要があリます。今回は、お客様からいただくご質問の回答となるような内容を意識しながら、源泉の基本についてコラムとしてまとめていきたいと思います。
源泉所得税とは何か
源泉所得税とは、本来納税すべき者に代わってその者の所得税を納付するため、本来の納税者から徴収する所得税のことです。サラリーマンなど、給与所得者の方の場合、社会保険料等と一緒に給与から天引きされていますよね。あなたが経営者だった場合、こちらが源泉徴収義務者になりますので、自社で雇用している給与所得者(従業員(サラリーマン))の方から源泉所得税を天引きすることになります。また、法人経営者で自分に役員報酬を払う場合も、自分への報酬も給与所得になりますので、源泉徴収をする必要があります。
源泉徴収制度
所得税は、原則として自分で確定申告書を作成し、自分で納税をする申告納税制度が採られています。これに対して源泉所得税は、給与や賞与、原稿料や税理士その他士業の報酬等、一定の支払いを、支払者側が事前に支払金額から本来受取者が納付すべき所得税の一部を源泉所得税として天引きし、天引きした所得税を、本人に代わって納付します。これを「源泉徴収制度」といいます。法人経営者の場合は、自分が役員報酬を受け取りますので、他に従業員がいなくても源泉徴収義務者になります。また、従業員がいる個人事業者もスタッフの源泉を徴収する必要がありますので源泉徴収義務者です。また、個人事業者でスタッフがいない場合であっても奥様に専従者給与を払っていれば、源泉所得税を徴収し、代わりに納付する必要があります。なお、震災後は、源泉所得税に復興特別所得税が上乗せされて徴収されることとなっていますが、わかりにくくなりますので、ここではまとめて源泉所得税と説明しています。
源泉所得税の対象
経営者であるあなたが源泉所得税を徴収する必要があるもので、一番のメインは、次の2つです。
・役員報酬
・給与
これらは、毎月発生しますので、毎月徴収し、原則翌月10日までに納付することになります。
次に、毎月発生する可能性があるものは、次のものです。
・税理士等の報酬
税理士や社会保険労務士、弁護士等と顧問契約をし、毎月報酬を支払っている場合には、税理士等の報酬についても原則毎月源泉徴収し、翌月10日までに納付することになります。
その他、年に数回発生する可能性があるものです。
・賞与
・退職金
・原稿料や講演料の報酬
上記3つは、支払いが発生した時だけ源泉徴収し納付することになります。
これ以外にも写真の報酬など、源泉徴収をする必要があるものもありますが、ほぼ出てくることはないと思います。仮に出てきた場合も、源泉所得税が天引きされた請求書が送られてくると思いますので、請求書を見た段階で確認すれば十分対応できます。
源泉所得税の納付書
源泉所得税の納付書は、役員報酬・給与・賞与・退職金・税理士等の報酬については「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」という納付書を使って納付し、原稿料や講演料等については、「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」という納付書を使って納付します。
士業等の報酬で源泉徴収しなくていい場合
税理士と顧問契約をしている場合でも、個人事業者で従業員がなく、給与等について源泉徴収をする必要がない場合には、税理士等の士業報酬、原稿料、講演料等について、一部を天引きし、代わりに納付する必要はありません(そのまま全額を税理士等に払えばOKです)。
源泉所得税の天引き額の計算方法
源泉所得税の計算は、支払内容によって変わってきます。まず、給与については、毎年源泉徴収税額表が税務署から送られてきますので、税額表で確認します。総支給額から、社会保険料を引いた額と扶養の人数がわかれば、簡単に確認できます。賞与については、表で把握するわけではなく、計算が必要になりますが、賞与の源泉についても計算方法は、源泉徴収税額表に載っていますので、確認することができます。
次に報酬についてです。報酬は、復興税含め、10.21%(100万円を超える部分は20.42%の税率)の税率で計算します。ただし、報酬に関しては税理士報酬の場合、口座振替で天引き後の金額が振り替えられるケースがほとんどですし、その他源泉が発生する報酬についても、支払先が発行した請求書を見て支払うことになり、そこには源泉金額も記載されていますので、そこまで問題になることはないと思います。
源泉所得税の納付方法
源泉所得税は、原則的には、給与・報酬等の支払月の翌月10日までに納付書で納付することになります。ただし、給与支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者の場合、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」を行っていれば、年に2回、まとめて納付することができます。まとめられる期間と支払日は次の通りです。
1月から6月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・7月10日
7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・翌年1月20日
なお、納付書は毎月納付の事業者の場合だと、毎月納付用の納付書が税務署から送られてきます。納期の特例を選択している場合については、納期の特例用の納付書が届きます。なお、納付書をなくしてしまった場合については、最寄りの税務署でもらうことができます。
年末調整
年末に会社が年末調整を行い、在籍している給与所得者の方の所得税の納付額を計算します。計算の結果、本来のその方の所得税額より天引きした源泉所得税が多ければ会社が本人に還付し、逆に足りなければ本人から徴収します。年末調整によって行った還付・徴収については、毎月納付であれば、1月の源泉納付時に調整することになります。
源泉所得税の不納付加算税と延滞税
源泉所得税の納付について、期限は絶対です。1日でも遅れてしまうと、納付額の10%をペナルティーとして追加で払うことになります。これを不納付加算税といいます。なお、税務署からの指摘前に、自主的に納付すれば、不納付加算税は5%に減額されます。また、不納付加算税とは別に、納期限の翌日から完納日までの期間に応じて延滞税もかかってきます。
その他注意点
納期の特例を選択している場合、7月10日が半年に一度の源泉所得税の納期限になります。社会保険の算定基礎届、労働保険の年度更新手続きについても、期限は7月10日になりますので、社会保険や労働保険に加入している場合は、あわせて行う必要があります。
まとめ(経営者がやらなければいけない源泉手続き)
・毎月給与から源泉所得税を天引きして徴収する
・税理士報酬等も源泉所得税を天引きする必要がある
・天引き月の翌月10日までに、納付書で納付する
・納期の特例を選択している場合、納付は7月と1月の年2回、半年分を納付
・1月に年末調整で過不足を精算する必要がある
・納付が遅れるとペナルティーがある
・7月10日の夏期源泉納付期限は、社会保険・労働保険の提出期限でもある
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