住宅取得等資金の贈与を受けたときの贈与税や住宅ローン控除の併用について
2021.06.23
住宅取得等資金の贈与を直系尊属から受けると、一定の額まで贈与税が非課税になる特例があります。
この記事では、
・特例を使ったときの贈与税
・特例と住宅ローン控除は併用できるか
について解説します。
住宅取得等資金の贈与を受けたときの贈与税
住宅取得等資金の贈与を受けたときは、贈与税の申告をすることで、一定の額まで贈与税が非課税になります。
非課税となる金額には限度額がありますので、詳しくはこちらをご覧ください。
もし非課税限度額を超える資金の贈与を受けたとき、その部分は、贈与税の対象になります。
ただし、そこでも全額が課税対象になるわけではありません。
いくらから贈与税の対象になるかは、贈与を受ける人(住宅取得等資金をもらった人)の贈与税の計算方法が、「暦年課税」なのか、「相続時精算課税」なのかで変わります。
贈与税の「暦年課税」と「相続時精算課税」とは
贈与税の計算方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの方法があります。
税務署に何も手続きをしなければ、「暦年課税」ですが、贈与した年の1月1日時点で60歳以上の親・祖父母から受ける住宅取得等資金の贈与であれば、その人物からの贈与について、「相続時精算課税」を選択することができます。
暦年課税とは
「暦年課税」とは、1月1日~12月31日の暦どおりの期間で贈与を区切り、その間にもらったすべての贈与財産を合計して、贈与税を毎年計算する方法です。
「暦年課税」には、毎年110万円の基礎控除があります。
そのため、
・住宅取得等資金の贈与で非課税限度額を超える額が110万円未満である
・その年に他の人から贈与を受けていない
の両方にあてはまれば、贈与税は発生しません。
相続時精算課税とは
贈与した年の1月1日時点で60歳以上の親・祖父母から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、非課税限度額を超える部分は、「相続時精算課税」を選択できます。
「相続時精算課税」を選択すると、その人物からの累計2,500万円の贈与に対する贈与税が、非課税になります。
したがって、「非課税限度額+2,500万円」まで、住宅取得等資金の贈与を、とりあえずのところ非課税で受けることができるということです。
ただし、相続時精算課税で贈与された財産は、相続の時(贈与をした人が亡くなった時)に、相続財産の計算に加えられます。
贈与税は非課税でも、代わりに相続税がかかるという制度です。
「相続時精算課税」を選択するには、税務署に、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに「相続時精算課税選択届出書」を、戸籍謄本などの必要書類とともに提出します。
なお、この届出書を提出すると、その人物からの贈与を暦年課税で受けられなくなります。元に戻すことはできませんので、ご注意ください。
住宅ローン控除との併用が可能か
住宅取得等資金の贈与の非課税特例と、所得税の住宅ローン控除は併用することができます。
たとえば、非課税限度額が1,000万円で、4,000万円の自宅を購入する場合、親から1,000万円の贈与を受けて、自分で3,000万円の住宅ローンを組めば、3,000万円の住宅ローンについて、住宅ローン控除を適用することができます。
ただし、住宅ローン控除を適用できるローンの額にも上限があります。
住宅取得等資金の贈与+住宅ローン控除の場合
住宅ローン控除の対象になるローンの上限は、住宅の取得額です。
仮に4,000万円の自宅に対し、5,000万円の住宅ローンを組んだとき、住宅ローン控除の対象になるのは4,000万円までになります。
この4,000万円の期末残高から、毎年の控除額を計算します。
住宅取得等資金の贈与の非課税特例と住宅ローン控除を併用する場合は、非課税特例を受ける金額を、先に住宅の取得額から差し引きます。
たとえば、
・自宅の取得額:4,000万円
・住宅取得等資金として非課税で受けた贈与:500万円
・住宅ローン:5,000万円
の場合、住宅ローン控除の対象になるローンは、3,500万円になります。
住宅取得等資金の贈与+相続時精算課税+住宅ローン控除の場合
たとえば、
・自宅の取得額:4,000万円
・住宅取得等資金として非課税で受けた贈与:1,000万円
・相続時精算課税による贈与:500万円
・住宅ローン:5,000万円
の場合で、相続時精算課税による500万円も住宅の取得に充てているときは、住宅取得等資金と同様に、先に住宅の取得額から差し引きます。
したがって、住宅ローン控除の対象になるローンは、2,500万円になります。
住宅取得等資金の贈与を受けたときの贈与税や住宅ローン控除の併用について記事まとめ
・住宅取得等資金の贈与の非課税額を超える贈与には、「暦年課税」か「相続時精算課税」で贈与税(相続税)が計算される
・住宅ローン控除との併用は可能であるが、住宅取得に充てた贈与額で調整する必要がある
【 起業支援 ・節税対策なら名古屋市北区の三宅正一郎税理士事務所にご相談下さい】