給与計算の「扶養親族等の数」の正しい数え方
2021.08.26
この記事では、給与計算で迷いやすい「扶養控除等の数」の数え方について解説します。
扶養親族等の数とは
「扶養親族等の数」を正しく数えることによって、毎月の源泉徴収税額に人的控除(配偶者控除、扶養控除、障害者控除、ひとり親・寡婦控除、勤労学生控除)をある程度まで反映させることができます。
たとえば、社会保険料控除後の月給が30万円のときの源泉徴収税額は、通常8,420円ですが、もしその人の「扶養親族等の数」が4人の場合、1,890円になります。
(出典)国税庁HP:令和3年分 源泉徴収税額表の一部(青枠は筆者によるもの)
扶養親族等の数は、その人から提出を受けた「給与所得者の扶養控除等申告書」などの内容から、給与計算の担当者などが判断します。
扶養控除等の数の数え方
扶養親族等の数に数えることができるのは、従業員本人(以下、「本人」)、その配偶者、その親族のうち、一定要件を満たす人です。
要件を満たす人が1人いれば、通常、扶養親族等の数を「プラス1」でカウントしますが、配偶者や扶養親族が「同居特別障害者」にあたる場合のみ、「プラス2」でカウントします。
【扶養親族等の数:+1人】
・配偶者が源泉控除対象配偶者にあたる場合
・親族が控除対象扶養親族にあたる場合
・本人がひとり親・寡婦、勤労学生にあたる場合
・本人・配偶者・扶養親族が税法上の一般・特別障害者にあたる場合
【扶養親族等の数:+2人】
・本人・配偶者・生計を一にする親族が、特別障害者である配偶者・扶養親族と同居している場合
この記事では、「プラス1」でカウントするもののうち、
・配偶者が源泉控除対象配偶者にあたる場合
・親族が控除対象扶養親族にあたる場合
・本人がひとり親・寡婦、勤労学生にあたる場合
について解説します。
障害者がいる場合のカウントは、実務で間違いが起こりやすいため、別記事で詳しく解説します。
配偶者が源泉控除対象配偶者にあたる場合とは
源泉控除対象配偶者とは、本人(合計所得金額の見積もり額が年900万円以下)と生計を一にする配偶者のうち、
・合計所得金額の見積もり額が年95万円以下
・青色・白色事業専従者でない
をすべて満たす人のことです。
これは、配偶者控除・配偶者特別控除によって38万円の控除を受けられる配偶者の範囲でもあります。
源泉控除対象配偶者にあたるかどうかは、扶養控除等申告書や基礎控除等申告書の、下記の赤枠の欄で確認をします。
(出典)国税庁HP:給与所得者の扶養控除等の(異動)申告より(赤枠は筆者によるもの)
(出典)国税庁HP:給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告より(赤枠は筆者によるもの)
親族が控除対象扶養親族にあたる場合とは
控除対象扶養親族とは、従業員と生計を一にする親族のうち、下記の要件をすべて満たす親族をいいます。
・年末時点で、満16歳以上である親族(翌年1月1日生まれを含みます)
・合計所得金額の見積もり額が年48万円以下
・青色・白色事業専従者でない
控除対象扶養親族にあたるかどうかは、下記の赤枠の欄で確認をします。
本人がひとり親・寡婦にあたる場合とは
本人がひとり親か寡婦のいずれかにあたる場合、扶養控除等の数に1名を加えます。
ひとり親とは
下記の要件をすべて満たす親をいいます。
・本人に事実上婚姻関係にある一定の人がいないこと
・本人の合計所得金額が500万円以下であること
・生計を一にする子(その年の総所得金額等の見積もり額が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人)がいること
寡婦とは
令和2年分からの寡婦は、ひとり親に該当しない人で、下記のア・イのいずれか一つにあてはまる人をいいます。
ア 夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
イ 夫と死別した後婚姻をしていない人(夫の生死が明らかでない一定の人を含む)で、合計所得金額が500万円以下の人
ひとり親・寡婦の判定は、年末の状況で行います。
年の途中でひとり親・寡婦に該当することになった従業員には、異動申告書(扶養控除等申告書と兼用)を出し直してもらうか、関係する項目を補正してもらいます。
合計所得金額は、基礎控除等申告書で判定します。
本人が勤労学生にあたる場合とは
従業員本人が、下記の要件を満たす「勤労学生」にあたる場合も、扶養控除等の数に1名を加えます。
・合計所得金額が65万円以下で、かつ、給与など勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること(例:給与の収入金額が年120万円以下で、その他の所得が年10万円以下)
・学校教育法に規定する学校(小学校~大学・高専)、学校法人、職業訓練法人による一定の課程の学生、生徒であること
勤労学生にあたるかどうかは、下記の赤枠の欄で確認をします。
給与計算の「扶養親族等の数」の正しい数え方 まとめ
「扶養親族等の数」に数えることができるのは、本人に源泉控除対象配偶者・控除対象扶養親族がいる場合、本人・配偶者・扶養親族の中に税法上の一般・特別障害者がいる場合、本人がひとり親・寡婦・勤労学生にあたる場合です。
これらに該当する人がいれば「扶養親族等の数」に通常1名を加算しますが、「同居特別障害者」がいる場合のみ2名を加算します。
障害者がいる場合の「扶養親族等の数」の数え方は、別記事で詳しく解説しています。
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