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配偶者居住権は本当に相続税の節税になる? 名古屋市北区で税理士なら三宅正一郎税理士事務所

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配偶者居住権は本当に相続税の節税になる?

2022.04.22

配偶者居住権を設定することによって、相続税を節税することが可能です。

ただし、二次相続まで考えたとき、配偶者居住権を設定するとかえって相続税が高くなるケースが存在します。

配偶者居住権の概要

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、夫や妻が亡くなり、遺された配偶者が、亡くなった人が所有する住宅に住んでいた場合、その住宅に引き続き住むことのできる権利をいいます。

民法の改正によって、令和2年4月1日以降に発生した相続から認められるようになった権利です。

配偶者居住権は何のためにある?

通常、住宅に住む権利は、住宅の所有権と一体になっていますが、配偶者居住権とは、住宅の所有権から住む権利だけを安い価格で分離したものとなります。

なぜこのような権利が認められるようになったかというと、改正前は、以下のような問題があったからです。

【例】

・夫が死亡

・夫の相続財産:夫婦で住んでいた住宅(3,000万円)、現金3,000万円

・相続人:妻、子の計2名

この例では、妻子に、各3,000万円の法定相続分があります。

しかし、妻が住宅を取得して現金を子がすべて相続すると、妻は生活資金を得ることができません。

もちろん子が同意すれば、住宅も現金も妻が相続できますが、血の繋がりがなく面識もない子(例:前妻の子など)との相続などでは、こうした問題が起こる可能性があります。

このようなケースでは、所有権よりも低い金額で遺産分割ができる「配偶者居住権」を配偶者が取得することで、問題を解決できる可能性があります。

仮に住宅を、「配偶者居住権1,000万円」と「所有権2,000万円」に分離することができた場合、子が住宅の所有権2,000万円を取得すれば、妻子で現金を分け合うことができます。

配偶者居住権が節税になることも

配偶者居住権の趣旨から考えれば、円満に遺産を分け合える親子間の相続での利用メリットは無いように思えます。

しかし、あえて配偶者居住権を設定し、実子が住宅の所有権を取得すると、たとえば、一次相続(例:父の相続)と二次相続(例:母の相続)で支払うトータルの相続税が少なくて済む可能性があります。

配偶者居住権が節税になる理由と注意点

配偶者居住権の相続税評価額は低い

配偶者居住権を取得した場合、その相続税評価額は、「配偶者居住権」(建物部分)と「敷地利用権」(土地部分)に分けて計算します。

いずれも、配偶者居住権の存続期間(※)が長いほど評価額は高くなりますが、所有権をまるごと取得した場合よりは、評価額は低くなります。

評価額の計算方法は、国税庁のホームページで公開されています。

なお、この計算方法は、遺産分割のための配偶者居住権の計算ではなく、あくまで相続税を計算するための方法です。

(※)配偶者居住権を終身で設定する場合は、平均余命を存続期間とします。

配偶者居住権を設定すれば1回目の相続税が安くなる

相続税の計算は、各財産の相続税評価額を合計した金額から基礎控除額を差し引き、まずはトータルの相続税額を計算して、その税額を、実際に取得した財産額に応じて各人に分配します。

この時、配偶者に分配された相続税は、「配偶者の税額軽減」によって多くの場合「0円」になります。

つまり、配偶者居住権をあえて設定すれば、1回目の相続で、配偶者居住権と敷地利用権に関する分の相続税を、親も子も負担しなくて済むのです。

同時に、一次相続で配偶者に相続財産を集中させた場合の、二次相続の増税問題もクリアすることができます。

ちなみに、配偶者居住権が死亡や存続期間の満了によって消滅した場合、みなし贈与の適用もないことが通達で明らかにされています。

配偶者居住権による節税の注意点

それでは、配偶者居住権を設定すれば必ず相続税が減るのかというと、一次相続と二次相続の税額を、実際の財産額をもとにシミュレーションしてみなければ正しい判断はできません。

理由はいくつかあるのですが、そのうちもっとも重大な理由が「小規模宅地等の特例」にあります。

わかりやすいよう「父の相続(一次相続)」→「母の相続(二次相続)」とします。

まず、母が1回目の相続で自宅の敷地を取得した場合、その敷地は、必ず小規模宅地等の特例の対象となります。

それが配偶者居住権であっても、敷地利用権(土地部分)の金額が80%の減額対象になります。(面積上限あり)

しかし、母の存命中、子が相続した両親の自宅の宅地に小規模宅地等の特例を適用できるのは、子が生前の父と同居しているケースに限られます。

子がすでに実家を出て独立している場合、1回目の相続で配偶者居住権を設定し、子がその敷地の所有権を取得しても、その敷地は減額できないということです。

敷地の評価額が高く、母の年齢等から敷地利用権の評価額もそれほど計上できなかった場合、かなりの税負担が生じます。

ところが、子がすでに実家を出ている場合で、かつ、自身や関係者(※)の持ち家に住んでいない場合、2回目の相続(母の相続)なら「家なき子」として小規模宅地等の特例により80%の減額ができる可能性があります。

したがって、1回目の相続で配偶者居住権を設定せずに、母に自宅をまるごと相続してもらい、2回目で家なき子として小規模宅地等の特例を適用して、実家の宅地を相続したほうが、トータルの相続税負担が少なくなるケースが出てくると考えられます。

(※)相続開始前3年以内に、本人、その配偶者、3親等内の親族や特別関係法人などの持ち家に居住したことがないことなどの要件を満たす必要があります。

配偶者居住権は本当に相続税の節税になる?記事まとめ

配偶者居住権の設定が節税になるかどうかは、小規模宅地等の特例の適用、配偶者居住権や敷地利用権の相続税評価額、他の相続財産の状況も関係してきます。

本文のとおり、配偶者居住権はうまく活用すれば、誰でもできる確実な節税方法といえますが、逆に損をするケースもあります。

必ず税理士に二次相続までのシミュレーションを依頼してください。

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