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法人新規設立時に提出する届出書類一覧

2019.06.22

法人を設立すると、個人事業で開業した場合と異なり様々な届出が必要になります。今回は税務署への届出、市・県への届出、社会保険、労働保険の届出等法人設立時に忘れてはいけない届出書類をご紹介させていただきます。

税務署に提出する届出書類一覧

法人設立届出書

提出期限:設立日から2か月以内
添付書類:定款写し、株主名簿、法人設立時の貸借対照表等の必要書類
法人を設立したことを税務署に報告するために提出する届出です。

給与支払事務所等の開設届出書

提出期限:設立日から1か月以内
法人は、雇用する従業員の給与から、源泉所得税として一部を天引きし、天引きした源泉所得税を国に納める義務があります。給与支払事務所等の開設届出書を提出することにより、税務署側が当該法人を源泉徴収義務者だと把握します。源泉徴収義務者だと把握されることにより、あなたのもとに、源泉納付に必要な源泉所得税の納付書が送られてくるようになります。なお、源泉徴収義務は、代表者が役員報酬を受け取る関係上、必ず発生します。また、納付が遅れると、不納付加算税・延滞税といった罰金がかかります。

棚卸資産の評価方法の届出書

提出期限:確定申告の提出期限まで(申請がない場合は最終仕入原価法)
棚卸資産とは、仕入の期末在庫のことを言います。棚卸資産の評価方法の届出書は、この期末在庫の評価を最終仕入原価法以外の方法に変更したい場合に届出る書類になります。最終仕入原価法は、棚卸資産を最も近い時期に取得した価額を用いて評価する方法になります。

減価償却資産の償却方法の届出書

提出期限:確定申告書の提出期限迄(提出がない場合は、建物等を除き定率法)
減価償却の償却方法を変更する場合に提出する書類です。法人の場合、届出書を提出しないと、建物、建物付属設備、構築物については、毎年一定額ずつを償却する定額法で、それ以外の資産については、定率法という償却方法により固定資産を償却することになります。定率法は、耐用年数の初期に多額の減価償却費を計上し、耐用年数が後半にいくにつれ、償却費が少なくなっていくという減価償却の方法です。個人事業の場合、届出をしないとすべて定額法で減価償却することになりますが、法人の場合は建物、建物付属設備、構築物以外については届出しなければ定率法で償却します。個人と法定償却方法が異なりますので、届出を出さない場合は個人と同じように車両等の資産を定額法で償却しないように注意して下さい。

青色申告の承認申請書

提出期限:設立3か月を経過した日と最初の事業年度終了のうち早い日の前日
青色申告承認申請書は、法人設立時に提出しておかなければならない最も重要な書類です。この書類を提出することによって青色申告の適用が受けられます。青色申告はしっかりと複式簿記で帳簿を作ることにより、損失を9年間繰越せるといった特典があります。また、一定の資産を購入した場合に受けられる税額控除や特別償却、30万円未満の資産を取得時に一時で損金の額に算入(減価償却を待たずに取得時に一時で費用化できる制度)するといった特典も青色申告をしていないと受けることはできません。必ず忘れないように提出してください。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

法人は、雇用する従業員の給与(代表者の役員報酬も含まれます)から源泉徴収をして、徴収した源泉所得税を、翌月10日までに納付しなければなりません。しかしながら、中小事業者が、源泉所得税を毎月納付するというのは、事務負担的にも大変です。そこで、事務手続きの簡略化という意味で、給与の支給人員が10人未満の小規模事業者は、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出することで、半年に一度納付すればよいこととされています。具体的には、1月から6月に対応する源泉所得税を7月10日に、下半期7月から12月までに支払った源泉徴収税額を翌年の1月20日までに納付することになります。なお、この納期の特例は、届出書を提出した月の翌月以後に支払う給料等から適用が受けられます。

都道府県に提出する届出書類一覧

法人設立・事務所等設置報告書(愛知県の場合)

提出期限:設立日から2か月以内(愛知県の場合)
添付書類:定款写し、登記事項証明書
法人を設立したことを県に報告するために提出する届出です。なお、都道府県により届出書の名称、提出期限等が異なります。

市に提出する届出書類一覧

法人の設立申告書(名古屋市の場合)

添付書類:定款写し、登記事項証明書
法人を設立したことを県に報告するために提出する届出です。なお、市町村により届出書の名称、提出期限等が異なります。謄本については、税務署に提出する必要がなくなりましたが、県と市には引き続き提出する必要があります。なお、謄本はコピーで大丈夫です。

社会保険事務所に提出する届出書類一覧(健康保険・厚生年金保険)

新規適用届

新規適用事業所現況届 

被保険者資格取得届

被扶養者届

国民年金第三号被保険者関係届

提出期限:5日以内
社会保険(健康保険・厚生年金)に加入するための手続きです。法人の事業所は、全て社会保険への加入が義務付けられています。また、個人事業の場合、代表者は社会保険に加入することができませんが、法人の場合、代表者も社会保険に加入することになります。健康保険に加入することで、医療費が3割負担(現役世代の場合)になりますし、厚生年金に加入することで、将来もらえる年金が増加します。なお、給与の額が多ければ多いほど、社会保険料の額は増加します。社会保険料増加分についてですが、厚生年金部分については、多く払えば、将来年金として多く戻ってきます。他方、健康保険については多く払っても特段なにか優遇される訳ではありません。多く払った方も少なく払った方も受けられる特典は同じです。

公共職業安定所に提出する届出書類一覧(雇用保険)

適用事業所設置届

提出期限:開設後10日以内に届出

被保険者資格取得届

提出期限:雇用した翌月10日までに届出
法人設立後、従業員を1人でも雇用した場合、雇用保険加入義務が発生します。雇用保険は、加入者(従業員)が退職した場合に失業保険が受けられるセーフティーネットとして有名ですが、それ以外にも特典があります。例えば、教育給付金という制度があります。働く方が、教育訓練受講のために支払った金額の一部について給付を受けられる制度で、上手く活用することで、スタッフの主体的な成長を促すことができます。余談ですが、私自身も税理士試験受験のための学費の一部は、教育給付金でまかないました。なお、この雇用保険ですが、社会保険と異なり、法人代表者は加入することができません。ですので、ハローワークへの手続きは、従業員がいる場合のみ行うことになります。

労働基準監督署に届出書類一覧(労災保険)

保険関係成立届

適用事業報告

提出期限:事業開始から10日以内に届出
添付書類:従業員を10人以上雇用する場合は就業規則
労災保険の加入手続きです。労災保険についても雇用保険と同様に代表者は加入できません。従業員がいる場合に限り、加入手続きを行うこととなります。労災保険は、通勤中の事故や業務に起因するケガや病気について労働者及びその遺族に保障を行う制度です。もし死亡事故等が発生した場合、中小事業者で保障を行うことは資金的に困難です。労災保険は、事業者に代わって保障を行ってくれる制度にもなっていて、経営者にとっても大切なセーフティーネットです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ここにまとめた書類が提出できれば、法人設立時の届出はばっちりです。個人同様、この中で特に重要なのは「青色申告承認申請書」です。青色申告承認申請書は、提出期限があります。期限に遅れると損失の繰越し等、メリットが受けられなくなります。必ず忘れないように提出しましょう。また、今回は割愛していますが、法人設立初年度に多額の設備投資を行う場合、消費税課税事業者選択届出書の提出を検討する必要があります。設立当初2年間は、消費税を納める義務が免除されていますが、消費税還付を狙ってあえて課税事業者となる手続きです。ただし、消費税に関しては、細かな検討が必要になりますので、必ず税理士に相談するようにして下さい。また法人については、設立時の資本金をどうするかによって地方税均等割、1期目2期目の消費税の納税義務等が変わります。一度登記してしまうと、後戻りはできませんので慎重な税務判断が必要です。法人設立にあたっては、最初に税理士に相談することをお勧めします。
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