第22回 創業融資を受ける時、団体信用生命に加入したほうがいい?
2020.10.21
日本政策金融公庫の融資を受ける際、条件に合致すれば団体信用生命保険に加入することができます。
住宅ローンでよく聞く団体信用生命保険ですが、あまり馴染みがない人の方が多いのではないでしょうか。
ここでは創業融資において利用が可能な団体信用生命保険の概要、加入したほうがいいケースにつき、わかりやすく解説します。
団体信用生命保険の加入は任意
最初に、一番重要な点を解説します。
それは、この団体信用生命保険(以後本文上では「団信」とします)に加入するかしないかは、あくまで任意ということです。
よく団信に入ったほうが融資は下りやすいのか、銀行や金融機関は喜ぶのかと質問あれる方がおられますが、融資が決まってからの手続きなので融資判断には何の影響もありません。
団体信用生命保険とは
団体信用生命保険自体は、住宅ローンでもいわれるような一般的な名称です。
住宅ローンを始めとする各種借入れについて、借入人が死亡したり高度障がい状態になったりした時に、保険会社がローンの残りを返済してくれる保険制度です。
日本政策金融公庫の融資においては「公益財団法人 公庫団信サービス協会」が取り扱います。
以後その公庫団信について解説します。
加入対象者
1.日本政策金融公庫(国民生活事業)から直接扱いの融資を受ける個人事業主、所定の法人
(注1)所定の法人は中小企業法人、NPO法人(下表①)、医療法人(下表②)
(注2)商工会・商工会議所の推薦を受ける経営改善貸付、各種環境衛生組合の推薦を受ける生活衛生改善貸付等一部対象とならない融資制度があります。
沖縄振興開発金融公庫の融資を受ける者も対象となります(詳細は省略)。
2.以下該当し、加入申込日(告知日)現在満15歳以上満68歳未満の場合
(1)個人事業主
(2)所定の法人の代表者であってかつ連帯保証人である者
(3)被保険者となることを生命保険会社が承諾した者
保障内容
被保険者が保障期間中に以下の場合に該当した時、生命保険会社が支払う保険金により残りの債務全額が弁済されます(残債務がなくなります)
1.死亡した時
2.保証開始以後の傷害や病気により以下のいずれかの高度障がい状態になった時
・両眼の視力を全く永久に失ったもの
・言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
・中枢神経系または精神に著しい障がいを残し、終身常に介護を要するもの
・胸腹部臓器に著しい障がいを残し、終身常に介護を要するもの
・両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く・永久に失ったもの
・1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
(公庫団信サービス協会HPより引用し、一部の詳細を割愛)
保障期間
1.保障の開始日
基本的に公庫の融資実行日
2.保障の終了日
以下のいずれかの早い日(抜粋)
・公庫の借入が完済した時
・被保険者が満77歳となった日の属する弁済責任期間(特約料を支払った期間)の末日
・特約料が支払われなった場合、納入期日の属する末日
・脱退の申し出のあった日の属する弁済責任期間の末日
・法人の場合、被保険者が代表権を失うか連帯保証人でなくなった時
特約料
残高、返済期間により特約料は変わります。
公庫団信サービス協会のHPに特約料支払い額シュミレーションがあるので、利用するといいでしょう。
公庫融資のみに特化しているので、同じ保険金額の割には一般の生命保険料より定額となっています。
加入手続き
融資が決まり、融資実行手続と同時に加入手続きをしなければなりません。
融資が実行されてから後になって加入することはできないので、特に注意しましょう。
団体信用生命保険のメリット・デメリット
メリット
遺産分割等の手続きを待たず迅速に債務を完済させることができ、遺族の心配を減らせます。
法人の場合、特約料が損金に算入できます。
デメリット
個人事業主の場合、特約料は必要経費とは認められません。
他に十分な額の生命保険に加入している場合、団信そのものが必要でないこともある
団体信用生命保険に加入しておいたほうがいいケース
・他に生命保険に入っておらず、相続人に迷惑が及ぶのを避けたいケース(財産があって相続放棄はしにくいケース)
・相続が生じた際に、少しでも借入の問題(相続)を迅速に解決しておきたいケース
「創業融資を受ける時、団体信用生命に加入したほうがいい?」記事まとめ
・団信保険とは、被保険者が死亡・高度障害となった時ローンの残りを支払わなくてよくなる制度
・団信加入は義務でない
・他の生命保険、所有財産も考慮して加入の判断をしたほうがよい、分からなければ専門家へ相談したほうがよい
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