医療費が10万円以下でも医療費控除を受けられる?
2020.03.17
医療費控除とは、自身や家族のために支払った医療費が基準額を超える場合、確定申告をすることによって、税金の控除を受けることができる制度です。
よく「医療費の支払いが年間10万円以下では受けられない」と言われているのですが、必ずしもそうではありません。
今回は、10万円以下でも受けられる医療費控除についてお話します。
医療費控除の「10万円以下」は「所得」によって変わる
医療費控除とは
医療費控除とは、所得控除の1つです。
1月1日から12月31日までの間に、自身や同一生計の家族のために支払った医療費の一部を、支払った本人の所得から控除することができます。
医療費控除を受けるには、確定申告を行う必要があります。
年末調整を受けたサラリーマンなどが医療費控除のために確定申告すると、年末調整で会社が計算した税金と、確定申告で計算し直した税金との差額が還付されます。
医療費控除の計算式
医療費控除の額の計算式は次のようになります。
まず【医療費の合計額】ですが、これは、実際に本人が支出した医療費の金額になります。
もし医療保険や健康保険などから保険金を受け取っている場合は、【医療費の合計額】から差し引かなければなりません。
なお、薬局で購入する医薬品や、通院時に利用した交通機関の運賃なども対象になります。
さて、問題は後半の【10万円or総所得金額等の5%のいずれか低い方】です。
総所得金額等の5%が10万円より低くなるのは、総所得金額等が200万円より低い場合になります。
つまり、総所得金額等が200万円より低い人であれば、医療費の合計額が10万円以下でも、医療費控除を受けることができるのです。
「総所得金額等が200万円より低い」とは?
総所得金額等の計算方法は、その人に何の所得があるかで変わります。
もし勤め先から給与を受け取っていて、給与以外に収入がない方の場合は、次のように計算できます。
令和元年分でいえば、給与年収で約311万円です。
令和2年分から給与所得控除が変わるので、数字が若干変わります。
1万2,000円から受けられる医療費控除もある
セルフメディケーション税制とは
医療費控除には、現在、従来からの医療費控除に加えて、「セルフメディケーション税制」も選択できます。
セルフメディケーション税制とは、ドラッグストアなどで購入できる一定の医薬品の購入費によって受けられる控除です。
自身や同一生計の家族のために購入した分が、控除の対象になります。
医療費の負担が少ない家庭でも、対象となる医薬品の購入があれば、医療費控除を受けられる可能性があるため、見落とさないようにしましょう。
なお、従来の医療費控除も受けられる場合は、どちらか一方を選択しなければなりません。
どちらを選んでも確定申告の際は「医療費控除」で申告します。
セルフメディケーション税制の控除額
セルフメディケーション税制による医療費控除の額の計算式は、次のようになります。
まず【対象となる医薬品】とは、スイッチOTC医薬品のことで、医療用の医薬品からドラッグストアなどで購入できるものに転用された医薬品を指します。 医療費控除として申告できるのは、1月1日から12月31日までに支払った購入費の合計額から、【1万2,000円】を差し引いた額です。
セルフメディケーション税制を適用するには
セルフメディケーション税制を適用するためには、確定申告をする本人が、健康の保持増進のための一定の取り組みを行っていることが必要です。
代表的な取り組みに、会社や市町村の健康診断、インフルエンザを含む予防接種などがあります。
共働き夫婦のどちらが医療費控除を適用する?
夫婦のどちらにも収入がある場合、どちらが確定申告をした方が税金上有利かというご質問をいただくことがあります。
支払った人しか控除できないという前提はありますが、税計算のしくみからいえば、まずは「所得の高い人」が申告することがポイントです。
これは所得税の税率が、所得の高い部分ほど上がるため、所得の高い人から控除した方が還ってくる税金が多くなるためです。
ただし従来の医療費控除では、総所得金額等が200万円より低い場合、医療費から差し引かれる額が10万円より少なくなります。そのため、所得金額等が200万円より低い人がいるときは、夫婦それぞれに金額をあてはめて、還付金のシミュレーションをしてみるとよいでしょう。
なお、従来の医療費控除とセルフメディケーション税制は選択制になりますが、同じ世帯の別の人が、それぞれの制度を使って確定申告をすることはできます。(例:夫→従来の医療費控除、妻→セルフメディケーション税制)
このときは「一定の取り組み」を行った人がセルフメディケーション税制を申告することに注意してください。
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