暗号資産の交換は納税資金不足に要注意
2021.10.19
暗号資産を他の暗号資産と交換した場合、納税資金が不足しないよう注意が必要です。
売却していなくても暗号資産に税金がかかる?
暗号資産の利益は「雑所得」に
暗号資産から得た利益は、「雑所得」として、所得税や住民税の課税対象になります。
この雑所得は「総合課税」ですので、ご自身が他で受け取った給与や個人事業などから得た所得と合算し、ご自身で所得税を計算して、原則、税務署に確定申告をしなければなりません。
暗号資産は交換も「利確」扱い
暗号資産の交換とは、たとえば、ビットコインをイーサリアムに交換するような行為をいいます。
暗号資産交換事業者(取引所)では、取り扱っている銘柄同士をその時のレートで交換してくれるサービスがあります。
「今もっている銘柄よりも価格が上がりそうな別の銘柄を見つけた」「リスクをコントロールするために銘柄を分散したい」といった動機で、利用されることが多いと思います。
交換する行為は、法定通貨である円に換金したわけではないため、税金はかからないように思えます。
しかし、税務上は「手元にあった暗号資産を一旦売却して、別の暗号資産を購入した」のと同じであると考え、利確したことになってしまいます。
交換すると納税資金が不足することがある
上記のとおり、売却・交換は、どちらも雑所得が発生しますが、この2つには、実際に円を手にしている・していないという大きな違いがあります。
交換による利確は、「お金はもらってないのに納税額だけ発生している」という状態です。
この状態で翌年を迎えると、その年の3月15日までに所得税の確定申告・納税が必要となります。
もちろん、交換した銘柄を売却することで、解決できる場合もあるでしょう。
しかし、お金が必要なときに、交換した銘柄がその価値を保っているとは限りません。
万が一、暴落してしまっていた場合、いよいよお金が足りなくなってしまいます。
もし、この事態を交換した年に予測できていれば、年内にあえて損切りをして、交換時のプラスと相殺し、納税額を減らすこともできます。
よく「暗号資産のマイナスは損益通算ができない」と言われますが、それはあくまで他の種類の所得との通算ができないという意味です。
同じ年に発生した総合課税の雑所得(-)と雑所得(+)同士なら、たとえ仮想通貨の銘柄が異なっていても損益通算(相殺)することができます。
しかし、年を越していると、この対応もできなくなってしまうのです。
「確定申告をしない」は一番ダメ
「納税できないなら、確定申告をしなければいい」というのは、やってはいけません。
期限内に確定申告をせずに、後から税務調査で納税しなければならない金額があったことがばれた場合、本来の納税額への上乗せとして、無申告加算税15%(50万円を超える部分には20%)と延滞税(遅れた日数に応じて発生する税金)がかかります。
「納められない=税額が高い」わけですから、その15%・20%の税もかなり高額になるはずです。
もし周囲に「申告してないけど何も言われない」などと言う人がいたとしても、真似をしてはいけません。
税務署が本気になれば、暗号資産の取引を確認し、過去5年にさかのぼって税金を徴収することができるからです。
確定申告は必ずして下さい。
納税資金が足りないときの対応方法
まず、納税時期を1か月ほど遅らせる方法として、振替納税と延納があります。
振替納税は、口座振替で所得税を納税する方法です。
口座振替のための依頼書を、税務署か金融機関に提出する手続きが間に合えば、4月下旬ころの口座引き落としとなりますので、その日までに現金を調達できれば間に合います。
延納では、5月31日まで延長できますが、納期限までに2分の1の税額を納めることや利子税の負担が発生します。
他にも、原則1年の猶予が受けられる「納税の猶予」もあります。
利用すれば延滞税がかかりますが、新型コロナの影響を受けて納税が難しい場合は、通常よりも有利な条件で利用できることがあります。
延納や納税の猶予を検討する場合は、早めに税務署に相談しましょう。
暗号資産の交換は納税資金不足に要注意まとめ
・暗号資産は交換でも利確となり、「雑所得」が発生する
・現金をもらっていないため、納期限に資金が不足する場合がある
・振替納税・延納・納税の猶予等の対応で、納税の時期を遅らせることができる
納税額がどのくらいになりそうか知りたい方や、年内に節税しておきたいという方は、税理士にご相談ください。
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