青色事業専従者給与・事業専従者給与を必要経費に算入するための要件
2019.09.2
個人事業主が生計を同じにする親族に支払った金銭は、たとえ事業に関するものでも、原則は必要経費となりません。
ただし、「事業専従者」である親族に支払った給与については、その一部または全部を必要経費に算入することができます。
必要経費に算入できる要件やその限度額は、個人事業主が青色申告者か白色申告者かで異なります。
事業専従者とは
個人事業主が、自身と生計を同じにする親族に給与を支払った場合、その額を必要経費に算入できるのは、その親族が「事業専従者」に該当する場合です。
事業専従者は、年齢が15歳以上の者で、かつ「その事業に専従していること」が要件となります。ここまでは青色申告、白色申告ともに共通です。
ただし「その事業に専従していること」の判定基準については、青色申告者と白色申告者に違いがあります。
事業に専従しているかの判定基準
事業に専従しているかは、原則、1年のうち6ヶ月を超えてその専従していることが要件です。
白色申告者の場合、これに該当しなければ必要経費に算入できません。
これに対して青色申告者の場合は、次のアとイの要件に該当する場合、その親族が、事業に従事できる期間のうち2分の1を超えて専従していれば、専従期間が6ヶ月以下であっても事業専従者として判断してよいことになっています。
ア:その事業が、年の中途における開業、廃業、休業等、その事業が季節的な営業であるなどの事情から、年を通じて事業が営まれなかった場合
イ:事業に従事する人の死亡、長期にわたる病気、婚姻などの事情から、事業主と生計を一にする親族として事業に従事できなかった期間がある場合
必要経費に算入できる限度額
必要経費に算入できる専従者給与の限度額についても、事業主が青色申告者か、白色申告者かで異なります。
青色申告者の必要経費に算入できる限度額
青色申告者の場合、税務署に提出した「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載された支給範囲内で、かつ、その支給額が労務の対価として相当であれば、全額を必要経費に算入することができます。
労務の対価として相当かどうかは、次の状況から総合的に判断されます。
・支給された給与の額が、労務への従事期間、労務の性質及びその程度
・他の従業員への給与及び同種同規模の事業に従事する者の給与の状況
・事業の種類や規模、収益の状況
他の業種と比較するのは難しいので、まずは事業所内で同じ業務を行う他の従業員の給与と、専従者の給与を比較しましょう。
従業員との給与差がある場合は、その差額がどのような理由(例:経験、資格・技能、職責等)で設定されたものか説明できるようにしておく必要があります。
「青色事業専従者給与に関する届出書」とは
青色事業専従者給与に関する届出書
青色申告者が、事業専従者の氏名や職務内容、給与の額等を記載して、税務署に届け出る書類です。
前述のとおり、届け出さえすれば全て必要経費にできるというような便利なものではなく、あくまで届け出の範囲内で、かつ労務の対価として相当である部分しか必要経費になりません。
青色事業専従者給与に関する届出書の提出期限
「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出期限は、原則、適用を始める年の3月15日(=確定申告の期限)までとなります。
なお、その年の1月16日以後に開業した人や新たに専従者がいることとなった人は、その開業の日や専従者がいることとなった日から2月以内に提出する必要があります。
1度提出すれば、あとは提出内容に変更がない限り、手続きは不要です。
白色申告者の必要経費算入額
事業主が白色申告者の場合、その事業専従者に支払われた給与は、「事業専従者控除額」に該当する部分だけ、年間の必要経費に算入されます。
事業専従者控除額の計算方法
次のアかイのいずれか少ない金額
ア・事業主の配偶者・・・86万円
・配偶者以外・・・50万円
イ 事業所得の金額÷事業専従者数+1
【計算例】事業専従者である妻に年120万円の給与を支給した場合。
(事業収入900万円、必要経費620万円(妻の給与含む)、事業専従者は妻のみ
事業専従者控除額
ア:86万円
イ:200万円・・・(900万円-500万円※)÷(1人+1)
ア<イ
∴86万円
※500万円=必要経費620万円-妻の給与120万円
ちなみに妻自身の給与所得を計算する場合、その給与収入になるのは、必要経費に算入された額となります。
つまり、120万円ではなく86万円となるので注意しましょう。
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