補助金をもらったら消費税分の返還が必要になることがある
2020.06.17
補助金を受け取ると、それに含まれる消費税分を返還しなければならない場合があることをご存知でしょうか。
今回は、補助金に含まれる消費税の返還について解説します。
補助金に含まれる消費税の返還義務
補助金に含まれる消費税の返還については、それぞれの交付要綱などに定められていることが多いです。
たとえば、愛知県の「あいちスタートアップ創業支援事業費補助金」では、その交付要綱に次のような規定があります。
“第15条 補助事業者は、補助事業完了後に消費税及び地方消費税の申告により補助金に係る消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額が確定した場合は、様式第8により速やかに知事に報告しなければならない。
2 知事は、前項の報告があった場合は、当該消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額の全部又は一部の返還を命ずるものとする。“
出典:あいちスタートアップ創業支援事業費補助金交付要綱
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/277849_994833_misc.pdf
要約すると
・事業者は補助金に係る仕入控除税額を報告しなければならないこと
・報告があった場合、その全部または一部の返還を命じられること
という内容です。
一体どういうことでしょうか。
消費税の返還が必要になる理由
補助金に消費税に相当する金額が含まれていると、課税事業者は、まるで消費税の還付を受けたような状態になってしまうことがあります。
補助金は不課税
補助金は、一般に対価性がないため不課税取引となります。
これに対し、補助金の申請対象となる経費の中には、消費税の課税仕入にあたるものがたくさんあります。
たとえば、機械や備品などの設備の購入費やそれに伴う諸経費です。
しかしこれらを消費税込みで申請し、交付された補助金に、実質は消費税にあたる金銭が含まれていたとしても、補助金が不課税であるため、それを納税することはありません。
返還が必要なのは「仕入控除税額」
たとえば、3万3,000円(消費税額3,000円)の課税仕入れを行った場合、全額控除ができる課税事業者であれば、この取引から生じる仕入控除税額は3,000円になります。
3,000円の消費税を支払ったのですから、これはOKです。
しかしこれを補助対象経費として申請し、仮に3万3,000円の補助金が支払われた場合、支払ったからこそ仕入控除税額に計上できたはずの3,000円分まで補充されるのはおかしいですよね。
前述のとおり、補助金は不課税取引ですから、この3,000円を納税することはありません。
「だったらこの3,000円を補助金の交付機関に返して欲しい」というのが、前掲の条文の趣旨になります。
原則は申請時に減額する
仕入控除税額の計算方法は、その課税期間の課税売上割合などから決まるため、期中では確定しません。
そのため、前掲の条文では、仕入控除税額が確定したとき、つまり消費税の確定申告をした後に、その金額を報告し、その後は命令にしたがって返還を行うことを定めています。
しかし、そうしたルールを定める一方で、申請時に仕入控除税額が明らかな場合は、減額して申請することが原則となります。
たとえば、ほぼ課税売上しかなく、全額控除になることが既にわかっているなどの状況があれば、消費税分を減額して申請することが考えられます。(報告は必要になります)
免税事業者・簡易課税事業者は返還なし
補助金を申請した事業者が、簡易課税事業者や免税事業者である場合は、返還額は生じません。
しかし、こうした事業者でも報告は必要となる場合が多いです。
これについては、それぞれの補助金の交付要綱などで確認しましょう。
消費税の返還額の計算方法
消費税の返還額は、定められた様式で報告書を作成して、補助金の交付機関に提出します。
様式については、補助金ごとに確認が必要です。
参考まで「あいちスタートアップ創業支援事業費補助金」の様式では、
1 補助金の額
2 補助金の確定時における仕入控除税額
3 消費税の確定時における仕入控除税額
4 返還する額(項目3から項目2を控除した額)
の4項目を記載するようになっています。
項目1は補助金の交付額、項目2は原則0円、そして項目2が0円であれば、項目3と4は同額になります。
たとえば、設備の導入費330万円(消費税額30万円)を補助対象経費として申請し、補助率を3分の2とした場合、支払われる補助金は、通常220万円(※1)となります。
以下、この220万円(項目1)から項目3と4の額を計算する方法を解説します。
なお、全額控除、個別対応方式、一括比例配分方式の判定については、こちらの記事をご覧ください。
(※1)330万円×3分の2
全額控除の場合
仕入控除税額の計算方法として、全額控除が適用される課税期間であれば、補助金に係る消費税の全額が仕入控除税額になります。
上記の例であれば、20万円(※2)です。
(※2)220万円×10/110
個別対応方式の場合
個別対応方式で計算する場合は、補助対象経費が
ア 課税売上にのみ要する課税仕入に係るもの
イ 非課税売上にのみ要する課税仕入に係るもの
ウ 課税売上と非課税売上げに共通して要する課税仕入に係るもの
のいずれかに区分されるで、下記のように変わります。
・アの場合 全額控除(上記参照)
・イの場合 控除しない(0円)
・ウの場合 課税売上割合の分だけ控除(一括比例配分方式を参照)
一括比例配分方式の場合
一括比例配分方式で計算する場合は、220万円に課税売上割合をかけた額になります。
課税売上割合が80%であれば、16万円(※3)になります。
(※3)220万円×80%×10/110
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