非居住者になっても受けられる所得控除
2021.10.8
この記事では、非居住者が確定申告をする場合に受けられる所得控除について解説しています。
確定申告が必要な非居住者とは
まずは、非居住者のうち、確定申告が必要な人について解説します。
非居住者の課税範囲と課税方式
個人が、所得税法上の非居住者にあたる場合、課税対象となる所得は、「国内源泉所得」に限られます。
国内源泉所得には、税務署に確定申告をする必要のない「源泉分離課税」が適用されるものと、確定申告の対象になる「総合課税」や「申告分離課税」が適用されるものに分かれています。
どの課税方式になるかは、所得の種類、恒久的施設の所有の有無、その所得が恒久的施設に帰属するかどうかから判定することとなります。
非居住者の定義や課税範囲については、こちらをご覧ください。
国内源泉所得の範囲については、国税庁のリンクを参考にしてください。
(参考)国税庁HP:「国内源泉所得の範囲」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2878.htm
恒久的施設とは
恒久的施設(PE:Permanent Establishment)については、下記のとおり定められています。
・事業の管理を行う場所、支店、事務所、工場、作業場
・鉱山その他の天然資源を採取する場所
・その他事業を行う一定の場所
(所得税法施行令第1条の2第1項)
ただし、恒久的施設にあたるかどうかの判定は、形式的に行うものではなく、機能的な側面を重視して行うものとされています。
さらに、その非居住者に適用される租税条約で異なる定めがあれば、そちらが優先されるなど、容易に判断ができないしくみになっています。
非居住者の確定申告の判定は税理士に相談を
ここまでの話をまとめると、非居住者の方に確定申告が必要かどうかは、課税方式の違いによって変わります。
しかしこの判定はなかなか難しいため、迷ったときは税理士等に相談されることをおすすめします。
非居住者に適用される所得控除
非居住者が確定申告をする際の所得控除は、その年においてずっと非居住者であった人と、居住者(非永住者)・非居住者の両方の期間がある人で、適用範囲に違いがあります。
一年中、非居住者だった場合
一年中ずっと非居住者だった方が、国内源泉所得の確定申告をする場合、雑損控除、寄附金控除、基礎控除の3つの適用が認められます。
非居住者の所得税の計算について定めている所得税法第165条において、上記3つ以外の控除の適用を除くとしているためです。
雑損控除は、国内にある資産に対する損失しか対象にならないことに注意が必要になります。
年の途中で居住者⇔非居住者に変わった場合
たとえば、1年以上の海外転勤のために出国した年など、同じ年に、居住者である期間と非居住者である期間がある場合、その両方の期間の所得を各種所得の区分ごとに計算した上で、合算し、所得税を計算することになります。(所得税法施行令第258条)
このような年の確定申告では、上記3つ以外の所得控除も使えますが、下記の扱いになります。
雑損控除
国内にある資産に対する損失が対象で、居住者の期間・非居住者の期間に支払ったものを合計して計算します。
他の控除
医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除は、居住者の期間で支払ったものに限られます。
ちなみに、出国時までに納税管理人の届出をしない場合、居住者の期間の確定申告の期限は出国の時までとなります。
この場合、配偶者控除や扶養控除などの人的控除の適用は、出国時の現況で判定することになります。
非居住者になっても受けられる所得控除 まとめ
・非居住者の確定申告でも所得控除は適用できるが、年の途中で変わった場合は扱いが異なる
・非居住者に確定申告が必要かどうかは、税理士に相談を
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