【新型コロナ】役員報酬を減額しても「定期同額給与」になる?
2020.07.22
役員に支払う給与を損金に算入するには、一定の方法で支給する必要があります。
最もなじみのある支給方法は、「定期同額給与」になると思いますが、新型コロナウイルス感染症の影響で役員報酬を減額せざるを得ない場合、損金算入のルールはどうなるのでしょうか。
役員報酬の支給方法等については、こちらの記事をご覧ください。
参照記事:役員報酬の支給方法や金額を変更するときの注意点
「業績悪化事由」にあたれば損金に算入できる
定期同額給与の金額を変更するとき、多くは、定時株主総会によって金額を改定し、その額を次の改定まで支給し続けていると思います。
この改定は、「通常改定」にあたります。
「通常改定」とは、会計期間開始の日から3ヶ月を経過する日までに行われる改定です。(法人税法施行令第69条第1項第1号イ)
では、これ以外に金額を改定した場合は、損金に算入できないのでしょうか。
改定には、通常改定以外にも
・臨時改定事由による改定
・業績悪化改定事由による改定
があります。(同号ロ、ハ)
新型コロナウイルス感染症による役員報酬の減額は、「業績悪化事由による改定」にあたる可能性があります。
業績悪化事由による改定とは
経営の状況が著しく悪化したことで、やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情がある場合の改定をいいます。
国税庁の「役員給与に関するQ&A」では、「業績悪化事由による改定」にあたる一般的な例として、以下のケースをあげています。
・株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
・取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
・業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
出典:「役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)」(Q1)
ただし、一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどは「業績悪化事由による改定」にあたりません。(法人税基本通達9-2-13)
また国税庁による新型コロナウイルスのFAQでは、
・感染拡大防止の観点から、イベント等の開催中止の要請があったことにより急激に業績が悪化したケース
・現状では売上などの数値的指標は著しく悪化していないが、観光客の減少等によって、今後、悪化する可能性があるケース
などでも「業績悪化事由による改定」にあたる可能性があることが示されています。
(参考)国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ
改定後の支給方法
改定後は、「当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日」から「給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日」までの間の各支給時期における支給額が同額であれば、損金に算入できます。(法人税法施行令第69条第1項第1号)
これは、どの改定事由でも共通のルールになります。
株主総会の開催が遅れた場合
業績が悪化していなくても、新型コロナウイルス感染症の影響で定時株主総会の開催が遅れてしまう可能性があります。
前述のとおり、「通常改定」は、会計期間開始の日から3ヶ月を経過する日までに行われる改定をいいます。
もし「申告期限の延長の特例」の指定を受けている法人であれば、その指定月数に2を加えた月数を経過する日が通常改定の期日です。
ただし「特別の事情」があるときは、これらの期日より後に改定された場合でも、通常改定にあたります。(法人税法施行令第69条第1項第1号イ)
国税庁の新型コロナウイルス感染症のFAQでは、感染症の影響によって、決算・監査に関する業務に大きな遅延が生じているため、通常どおり定時株主総会を開催できなかったことは、「特別の事情」にあたると例示しています。
(参考)国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ
【 起業支援 ・節税対策なら名古屋市北区の三宅正一郎税理士事務所にご相談下さい】