副業に開業届の提出は必要か
2019.12.6
「会社員なのですが、副業に開業届を出さないといけないのでしょうか?」というご質問をいただくことがあります。
ここでいう「開業届」とは、税務署に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」のことです。
この質問の答えは「事業所得にあたるなら出した方がよいですが、まずは事業所得かどうか慎重に判断しましょう」というものになります。
今回は、副業の開業届について解説します。
開業届の提出が必要になる人とは
届出が必要となる所得区分
開業届の提出が必要になる人は、所得区分のうち
・事業所得
・不動産所得
・山林所得
を生じる事業を新しく開始した人です。
この所得区分に該当する所得がなければ、提出する必要はありませんので、たとえば、週末にアルバイトをして給与を受け取っているようなケースは対象外です。
サラリーマンの副業で判断に迷うのが、自身の副業が、事業所得にあたるかどうかだと思います。
事業所得とは何か
事業所得とは、「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得」(所得税法第27条第1項)で、文中の「政令で定めるもの」は、次の1~12号の事業とされます。(所得税法施行令第63条)
一 農業
二 林業及び狩猟業
三 漁業及び水産養殖業
四 鉱業(土石採取業を含む。)
五 建設業
六 製造業
七 卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む。)
八 金融業及び保険業
九 不動産業
十 運輸通信業(倉庫業を含む。)
十一 医療保健業、著述業その他のサービス業
十二 前各号に掲げるもののほか、対価を得て継続的に行なう事業
なお、山林所得・譲渡所得に該当する所得や、不動産の貸付業などに該当する事業は除かれます。
サラリーマンの副業が事業所得になるか?
事業所得とは読んで字のごとく「事業」から生じた所得です。
「事業」かどうかは、その事業が反復性・継続性・営利性等を備えていることや、その態様などから総合に判断されます。
単発的、偶発的な収入が事業所得にならないのはわかりやすいのですが、サラリーマンの副業となると、もう少し厳しく考える必要があります。
なぜなら、税務署から「それは事業にあたらないのではないか」という疑いを向けられる可能性があるためです。
事業所得が税務署から疑われる理由
事業所得は青色申告の対象
事業所得であれば、税金面で非常に優遇されている「青色申告」の対象になります。
代表的なものが「青色申告特別控除」です。
事業所得は、要件を満たせば65万円(※)か10万円の青色申告特別控除を適用することができます。
65万円を適用する要件は、こちらで解説しています。
(※)2020年から55万円になるケースが出てきます。
このほかにも、青色事業専従者給与や少額減価償却資産の特例など、さまざまな優遇が受けられます。
つまり、事業所得で青色申告をすれば、雑所得などで申告するより税金が安くなります。
そのため、税務署から「それが本当に事業といえるのか」という疑いを向けられる可能性があるのです。
事業となる明確な根拠
何をもって「事業」とするか明確なルールはないのですが、たとえば、本業よりもはるかに少ない収入で、週末に数時間しか稼働していないような副業を事業所得とするのは難しいのではないかと思います。
開業届を出しても事業所得が認められたことにはならない
怖いのは「開業届」さえ出せば、事業所得になるという誤解です。
確かに開業届を提出し、青色申告承認申請書を提出すれば、書類上は整合性がとれるので、しばらくは何も言われないかも知れません。
しかし、後に税務調査が行われるなどして、最終的に税務署からダメと言われる可能性はあります。そうなれば、過去の申告分も雑所得などで修正申告することとなり、税金を追徴されることが起こりえます。
まとめ
副業に開業届の提出が必要になるかどうかは、その副業が事業所得などに該当するかどうかで決まります。
事業所得で青色申告をすれば、税金面は優遇されます。
しかし、副業を事業所得とすることには、それなりに厳しいチェックの目が向けられることを理解しておきましょう。
どうしても副業を事業所得で申告したい場合は、あらかじめ税務署の個別相談を利用して、回答を得ておくというのも、一つの防衛策かと思います。
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