【個人事業主向け】法人化が節税になるしくみと節税方法のまとめ
2024.02.28
個人事業を法人化すると節税になるという話をご存知でしょうか。
その理由は、個人の所得にかかる税金と法人の所得にかかる税金に違いがあるからです。
所得の金額が多くなるほど、個人のままで事業を続けるよりも法人化したほうが、事業に対する税負担が軽くなります。
法人の所得にかかる税金の種類
個人の所得にかかる税金は、所得税及び復興特別所得税、事業税、住民税になります。
これに対し、法人の所得にかかる税金は下記のものとなります。
法人税・地方法人税
法人税と地方法人税は、法人の所得にかかる国税です。
法人税については、中小法人(資本金や出資金が1億円以下の法人など)であれば、所得800万円以下の部分は15%、それを超える部分は23.2%の税率で計算されます。
地方法人税については、法人税の額に10.3%の税率を乗じた額になります。
法人事業税・特別法人事業税
法人事業税は、都道府県に納める地方税です。
資本金や出資金が1億円以下であることなど一定の条件を満たしていれば、基本的には所得400万円以下の部分は3.5%、400万円超800万円以下の部分は5.3%、それを超える部分は7.0%の税率で計算されます。
特別法人事業税は、基本的には事業税の37%になります。
(※)電気・ガスの供給業、保険業といった事業者は課税方法が異なります。
法人住民税(都民税、道府県民税、市町村民税)
法人住民税は、都道府県・市町村にそれぞれ納める「都民税・道府県民税」と「市町村民税」を合わせた地方税のことです。
それぞれに「法人税割」と「均等割」の2種類があります。
まず「法人税割」については、資本金や出資金が1億円以下であることなど一定の条件を満たしていれば、法人税額の7%(都道府県:1%、市町村6%)で計算されます。
「均等割」については少し特殊であり、所得や法人税の金額ではなく、法人の資本金や従業員の数によって下記のように決められています。
法人にかかる税金の納期限
法人が納める税金の納期限についてはこちらの記事で解説しています。
課税所得1,000万円にかかる法人の税負担はいくらか
参考までに課税所得1,000万円の法人にかかる税金を計算してみました。
ぜひ現在の個人事業の税負担と比べてみてください。
もしかすると「あれっ意外と高いな」と思われた方もいらっしゃるかも知れません。
しかし、法人の場合、ここからさまざまな方法で税負担を減らすことができます。
次項から法人の節税方法を解説します。
法人化した後の節税方法
ここからは、法人ならではの効果的な節税方法を解説します。
自分に役員報酬を支払う
まずは、ご自身に役員報酬を支払う方法です。
個人事業主であれば、ご自身の生活費を引き出す際は「事業主貸」で経理をし、一切経費になりません。
しかし、法人化すれば、定期同額で支給する役員への報酬はすべて損金(経費)にすることができます。
例えば、年600万円(月50万円ずつ)の役員報酬をご自身に支払うと、先ほどの約270万円の法人税等は、約80万円まで下がります。
600万円と会社負担分の社会保険料(法定福利費)約85万円(※1)が経費になるからです。
法定福利費の支出によって会社に残るキャッシュは減りますが、このケースでは節税によって会社に残る金銭の方が上回ります。
役員報酬については、こちらの記事も参考にしてください。
【個人の負担について】
会社負担分と同額の個人負担分の社会保険料の支出も必要になりますが、これまでの国民健康保険料と国民年金保険料の支払いや、厚生年金に加入できるメリットを考えると気にならないと思います。
また、役員報酬は個人の「給与所得」になります。
「給与所得」には個人事業税がかかりません。また、給与所得控除が適用されますので、役員報酬のすべてが課税対象になることもありません。
参考までに600万円の役員報酬に対する所得税・住民税は、合わせて約50万円(※2)ほどになると考えられます。
(※1)協会けんぽ(愛知県)の保険料率を参考に計算しています。
(※2)最低限の所得控除(基礎控除、健保と厚生による社会保険料控除)のみを考慮しています。
個人の税金を節税するには
役員報酬を支払うことによって個人の税負担が気になる場合は、家族に給与を支払うことがおすすめです。
個人事業主の時は、同一生計の配偶者や親族に給与を支払っても、それが事業専従者でなければ青色事業専従者として経費にしたり、専従者控除を受けたりすることはできませんでした。
法人であれば事業専従者に該当しなくても、配偶者や親族に支払った給与を経費にすることができます。
例えば、ご家族を役員に就任させて役員報酬を支払ったり、従業員として雇用して給与を支払ったりする方法が考えられます。
法人化してご自身にのみ役員報酬を支払うと所得が1人に集中してしまうため、個人の所得税の適用税率が高くなってしまうのですが、ご家族に給与を支払って分散させることによって所得税の負担を抑えることができるのです。
この他にも、生活にムリのない範囲で小規模企業共済やiDeCoに加入すると、個人の税負担をさらに抑えることができます。
(参考)
その他の節税対策
他にも社宅を使った節税対策などがあります。下記の記事もご覧ください。